第4章 異変
だんだんと変なことになってきた。
元々あいまいな存在だったし、実は私が『不死』ではないかも~とか、そういう新事実は正直どうでもいい。
でも、実は皆を傷つけるような化け物だったら。
もしライブラにいるときに、変身とかしたりして、皆を傷つけたら。
そう思うと、心臓がぎゅうっとしめつけられるように痛くなる。
「何も心配はいらない」
泣きそうになっていると、肩を抱き寄せられた。
その意味するところは私が何よりも知っている。
だから無言で、クラウスさんに身体を預ける。
この人がいてくれれば、絶対に大丈夫。
…………
車が止まる。私の家の前に着いたようだった。
門の前でお別れでいいのに、クラウスさんはわざわざ玄関まで送ってくれた。
「クラウスさんは?」
「私たちはまだ、ライブラで仕事が残っている」
あ。そうだった。チェインさんやザップさんは、別の任務に当たっているんだった。
日もとっくり暮れて、深夜に入りかけている。
今日はもう泊まるのは無理だろう。
「日を改めて、また詳しく話を聞きたい。頼めるだろうか」
「はい、もちろんです」
「色々あって疲れただろう。今日はよく頑張ってくれた」
クラウスさんはそのまま、流れるように自然な動作で私の肩を抱き、キスをした。
――!!
凍りついた。反射的に車の方を確認したが、スティーブンさんは電話をしてて、こっちを見てもいない。ギルベルトさんは、執事らしく最初から見ないフリ。ちょっと安堵。
なのでクラウスさんに頭を下げた。
「本当にご迷惑をおかけしました」
「君が私に迷惑をかけたことは一度たりともない」
クラウスさんは目を伏せる。
「全ては君を守れなかった、私の咎(とが)だ」
重いわ! たった数時間、迷子になっただけでしょうが!
まあ堕落王に相まみえ、何ごともなく終わったのは奇跡なんだろうけど。
「ではクラウスさん、また明日」
感謝の印に、こちらからも軽くハグをして微笑む。
「後で君の家に行く」
「でも私のせいでお疲れですし」
「君の元に行く」
「作戦終了を待っていたら相当遅くなりますよ? ライブラで休まれた方が」
「君に会いに行く」
「いやその……今日、泊まるの止めた方がいいんじゃ……」
「必ず行く」
「お待ち……しております……」
押し切られた。