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【血界戦線】紳士と紅茶を

第4章 異変



 するとクラウスさんが慌てたように、

「カイナ。ザップのことをあまり悪く受け取らないでくれたまえ。
 彼は君の居場所が判明するまで、チェインと一緒に君を捜し回っていた」

「君に万が一のことがあった場合、自分の責任になるのかと、そればかり気にしながらね」

 ……水をさすなあ、スティーブンさん。

 でも安心したこともあり、ついクラウスさんにもたれて寝そうになる。
 けど次の一言で覚醒した。

「カイナ。申し訳ないが、いったい君に何があったのか。どうか教えてくれたまえ」

 ……あの人と話したのは数分だけだけど。

 とりあえず説明しよう。隠す理由もない。

「実は堕落王が――」

 その名を口にした瞬間、車内に張り詰めるような緊張が走った。

 …………

 …………

 説明を終えても、お二人は黙りこくっている。

『…………』

 そして口を開いた。

「奇妙だな」
「ああ、附に落ちない話だ」

 二人で確認しあい、私を見る。
 威圧感がハンパないのですが……。

「君はどう思う、クラウス」

「カイナの不死は別の要素の一部であり、そもそも『不死』とは性格を異にするもの――そう解釈した」

「僕も同意見だ。僕らにカイナは、単なる不死者だ。
 だが、奴には全く違ったものに見えたということか」

「そうだろう。奴が空間転移という労力を割いてまで、不死者を観察したがるとは思えん」

 そしてまた二人して、じーっと私を見る。
 あと私の『不死』につく枕詞(まくらことば)が『単なる』でいいんだろうか。


「データの全面的な再精査を。『不死』という言葉の先入観に囚われ、本質を見失った可能性が高い」
「『メビウスの輪』の残党を捕らえる必要もありそうだな。僕が本部に連絡をしておこう」

 何だか私そっちのけで話が進んでいく。
 クラウスさんは私に厳しい顔で、

「カイナ。堕落王が直接君に接触した以上、今後、警戒が必要だ。
 ある程度の自由の犠牲は覚悟してくれたまえ」

「大丈夫ですよ。さんざん私をコキ下ろしてましたし」

「一度でも奴の視界に入ってしまったことが問題だ。
 このまま永遠に忘れているかもしれないし、ふいに思い出し再接触を図るかもしれない。
 いずれにしろ、当面は用心が欠かせない」

 ……スティーブンさんまで。

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