第4章 異変
…………
ATM前でしばらく待っていると――予想通りだ。
シルバーの高級車が来て、ATM前の路肩に停まる。
扉が開くなり、大きな影が飛び出した。
「カイナ!!」
クラウスさんだ。駆け寄って、両手を広げ、私を抱きしめようと――。
「ストップ、ストップ!! 大丈夫! 大丈夫ですから!」
あまりにも大声だったから、周囲の人たちが振り返ってるじゃないっすか。
たった半日なのに、今生の別れから再会したかのような感激っぷりだ。
クラウスさんは、私の腰に手を回し車に案内しながら、
「ともかく無事で何よりだ。こうして君を見つけるまで、気が気ではなかった。
よくこの場にとどまってくれた!」
「まあ他に方法はないだろうと思ったし……」
どうやって皆に居場所を教えたか。
解答。カードを使った。
カードの使用履歴を照合すれば、どのATMを使ったかの情報も一緒に出る。
私がいるATMの位置を、ライブラに割り出して迎えに来てもらったのだ。
私の金銭関係が、全てギルベルトさん管理だったから出来たことではあるけども。
多分気づいたもらえるとは思ったけど、100%の確証は無かった。なので、クラウスさんの車が見えたとき、正直泣きそうになった。
…………
車のドアが閉まり、ギルベルトさんが車を発進させ、ようやく人心地ついた。
てかギルベルトさんに加え、スティーブンさんまでいるし。
何だか、私の不注意でライブラのトップを動かし、本当に申し訳ない。
クラウスさんは私の肩を抱き寄せつつ、すぐに電話をしていた。
相手はチェインさんみたい。
「チェインが君と話をしたいと」
「あ、はい」
その後、電話口で目を離したことについて、ものすごい勢いで謝られた。
「いえ、元はといえば私のマナー違反が原因ですし。本当、大丈夫ですから!
ええ、はい。またいつでも泊まりに来て下さい。任務、お気をつけて!」
電話を切った。チェインさんは任務遂行中らしい。
なので私を迎えに行きたかったけど、行けなかったとのこと。
「ザップさんは?」
クラウスさんは私の頭を撫でながら、
「別の緊急事案の対処に向かってもらっている」
「最後まで、非は君かチェインにあると主張していたがね」
……ザップの野郎、清々しいまでのクズだ。