第4章 異変
堕落王フェムトに、勝手に別の場所に転送され、勝手に放置された。
――以上。
ヘルサレムズ・ロットの路上で、私は途方に暮れていた。
「あー、もう……」
いったいどうすれば、クラウスさんに連絡を取れるんだろう。
というか疲れた。ずっと歩き続けだ。
よく考えたら、昨晩は夜明けまでクラウスさんにヤラれてたんだった。
今になって疲れがどーっと来た。
やがて私は公園を見つけ、空いているベンチに腰かけた。
「どうしたもんか……」
考えろ考えろ。迷惑かけてばかりじゃダメだ。
合図を出す? 合図を見つける? 警察? 誰かに依頼する? さっきの堕落王さんを見つける?……ダメだ。どれも望み薄か、リスクが高すぎる。
「お嬢ちゃん、一人? おごるから飲みに行かない?」
「けけけけ結構です!!」
いかん。公園だってナンパがある。あと日が暮れてきた。
公園から逃げ、また人ごみに紛れながら困り果てた。
前みたいに『死んでも生き返るから大丈夫!』と言えた頃が懐かしい……。
とぼとぼ歩きながら、ポケットを探る。
ん?
――財布あったーっ!!
良かった~。これで冒険の難易度がグッと下がったじゃないか!
私は歩きながら、こっそり財布の中を確認する。
現金ゼロ。
…………。
ザップさんの度重なるカツアゲ……じゃない借金依頼で消えたんだった。
あ。でもカードがあるじゃんカード。
私はうきうきと、目の前に見えているATMに向かう。
ん? 待てよ。でも私の今の口座の全財産って確か――。
残高3ゼーロ。
「――――っ!!」
ATMを目前に頭を抱える。
そうだ。私のお金の大半は、ギルベルトさんに管理してもらってるんだった!
このカードは小遣い用カードだけど、ほとんど使わないから放置してた。
だって私の外出時は九割方、クラウスさんが一緒。
クラウスさんが、私に金を払わせるわけがない。
というわけで今まで『金に困る』という意識がなかったのもある。
じゃキャッシング? でも使い道を考えてから借りないと。
私はATM前で一生懸命に考える。
考えろ。魔術でも超能力でも超常現象でも『不死』でも、どんな方法でもいい!
今すぐ! 外部の人間に知られず! 皆に私の居場所を伝える方法は!?
――あ。