第4章 異変
落ち着け、落ち着け。まずは落ち着くんだ。
路地裏の壁にもたれ、必死に呼吸を整えてると、
「どうした、嬢ちゃん。気分が悪いのか?」
「一人? 観光客? お父さんとお母さんは?」
「困ったことがあるなら力になるぜ」
ヤンキーっぽい人たちに声をかけられた。
「ありがとうございます、結構です!」
笑顔で言って、そそくさとその場を離れた。
でも私、そんなに子供に見える? 地味にショックですが!
ヤバいヤバい。この街では立ち止まることすらヤバい。
急いで大通りに出て、少し走って、チラッと後ろを振り返る。
良かった。ついてこない。
通りは静かで、人が一人、歩いてるだけ。
顔の上半分を仮面みたいので隠した人だ。
「失礼」
「あ、すみません」
仮面の人とぶつかりそうになり、慌てて道を譲った。
とりあえず私に注目してる人はいない。
急いでクラウスさんに電話だ!
何かあったときには一にも二にも連絡と、指示されている。
チェインさんたちも、今頃顔を青くしてるに違いない。
私は、ふところのスマホを大急ぎで探る。
「――あ……!!」
『こら、歩きスマホはダメだよ』
ス マ ホ を 返 し て も ら っ て な い !
「嘘でしょ……」
途方に暮れた。
「電話を借りたら……いや」
そもそも秘密結社だし。クラウスさんの番号も、いざとなると思い出せない。
もう何でもいいから、とにかく目立つ目印を!!
いやヘルサレムズ・ロットは元ニューヨーク。
東京よりかは小さいが23区+αくらいは広いのだ。
そんな中の、どことも知れない場所に飛ばされ、ビル一個を見つけろとか……。
「そもそも、何で私は別の場所にポンと瞬間移動した!?」
いや今かよ!と己にツッコミをかましたくなることを、考えたとき。
「普通だなあ」
背後から失望したような声が聞こえた。
「?」
振り返る。すると背後に、顔の上半分を、仮面で隠した男性がいた。
ん? この人、さっき私の横を通り過ぎた人では?
あと、どこかで見たことがあるような……。
「面白いのが、ほいほい道を歩いているから、気まぐれで観察してみたら!」
するとその人は、髪をかきむしり、地団駄を踏み出した。
「何ったる平凡!! 普通だ、普通!!」
私は呆気にとられた。