第4章 異変
ザップさん。昼食時、私がチェインさんについて行くと知ったら、見るからに機嫌を悪くしていた。
一緒にライブラのビルを出て、別れてバーガー店に行くのかと思いきや、なぜか私たちと同じ店に入ってきた。
で、別の席でサンドイッチセットを注文。
量が少ないだの野菜が多すぎるだの、大声で文句を垂れ、禁煙席で堂々と喫煙。
最後は見かねてチェインさんが店の外に放り出したけど、こっちまで恥ずかしかった。
「話をそらしてんじゃねえよ! 犬女!」
「あんたこそ、何が言いたいの! ホンット、いい加減にしてほしいんだけど!!」
あかん。チェインさんがマジギレ寸前だ。
「あ、あの、落ち着いて、落ち着いて下さい……通行人の方が見てますよ」
折しも場所は交差点。『何だ何だ、痴話喧嘩か?』という、周囲の目が痛い。
お二人と出かけると、こうなることが本当に多い。
一刻も早く、お二人の喧嘩を止めないと。
でも私にライブラのツートップや、執事さんのような仲裁技術など皆無。
かといって、わざわざクラウスさんに連絡するには大げさすぎる。
「そろそろ休憩時間が終わりですから、休憩時間……」
だが二人とも、口げんかに夢中で私など眼中にない。
「どうしよう、どうしよう……」
おどおどして、数歩下がる。
すると二人が消えた。
「――?」
繰り返そう。二人が消えた。私の目の前から。
「あれ? チェインさん、ザップさん?」
びっくりして二人を探す。すると通行人の異界人の方に、もろにぶつかった。
「いってえな、ガキ! 殺すぞ!!」
「わ! す、すみません!!」
怒られるシチュが大の苦手な私、大慌てで謝り、そこを離れた。
「おかしいな。お二人とも、どこに消えたんですか?」
しばらく、交差点のあたりをウロウロし――気づく。
違う。ここはさっきと似た交差点だけど、違う場所だ。
二人が消えたんじゃない。
――私が、別の場所に瞬間移動した。
「何で……」
真っ青な顔になり、周囲のビル群を見上げる。
でもどれだけ目をこらしても、懐かしいライブラのビルは見えなかった。
確かに、この街ではちょっとよそ見をしたら、何が起こるか分からない。