第4章 異変
ヘルサレムズ・ロットの街は今日も騒々しい。
私はチェインさんと一緒にカフェを出た。
休憩時間を利用し街に出て、二人で人気スイーツをたっぷり堪能したのだ。
私たちは上機嫌でライブラのビルへ、ストリートを歩く。
「美味しかったね、カイナ」
「はい! あのチョコソースは想像よりずっと絶品でした!」
「カイナって、本当に幸せそうに食べるよね」
「あはは。甘い物にだけは目が無くって」
チェインさんの後をついていき、こっそりスマホを出す。
さっき食べた特盛りスイーツの写真の出来映えを確認する。うん、きれいに撮れてる。
あ、クラウスさんからのメッセージだ。返信ついでに写真を送信完了、と。
「あれ?」
スマホをスッと取られた。
「こら、歩きスマホはダメだよ」
チェインさんだ。メッと怒られ、恥ずかしくなる。
「すみませんでした」
「ちょっとよそ見してたら、何が起こるか分からないんだよ、この街は」
「はい、気をつけます」
「分かればよろしい」
チェインさんはちょっと笑い、私にスマホを返そうとして――。
「別にいいだろうが。どうせ気ぃつけてても、死ぬときゃ死ぬんだ、この街はよぉ」
……チンピラの声がする。
振り向くと、後ろから歩き煙草、がに股でこっちに来る銀髪チンピラがいた。ものすごく不機嫌そうだ。
「ザップさん。でも、歩きスマホはやはり良くないかと」
チェインさんの背に隠れるように、おずおずと言うと、
「てかさ、何だよ犬女。ちょっと前まで番頭と一緒にチビのこと疑っといて!
何しれっと、こいつの『いいお姉さん』ポジションに収まろうとしてんだ、コラ!!」
ザップさん、なぜか私をスルーし、チェインさんに食ってかかってる。
そういえばこのお二人、犬猿の仲だと聞いたが。
「あのさ。あんたが何言ってるのか、本っ気で意味分かんないんだけど。
あとさっきの店でマナー悪すぎ。禁煙席で煙草吸うのは論外。大声で料理にケチつけるのも止めて」
チェインさんは心底から迷惑そう。
「は!? あんだけ高い金とって、あれっぽっちのサンドイッチとか、ありえねえだろ。
ぼったくりって言うんだよ!」
「女性客メインの店の量はあんなもんなの! 文句言うなら最初から入らなきゃいいでしょ!」
……ホント、何がしたいんだろう。ザップさん。