第4章 異変
どうにか入力作業を片付け終えた頃、休憩時間を告げる鐘が鳴った。
するとクラウスさん。ガタッと立ち上がり、いそいそとこちらに来ようとした。
そのとき。
「うーっす!」
片手を上げてチンピラが入ってきた。チンピラの分際で重役出勤とは。ザップさんは私を見るなり近づき、
「いるな、チビ。よし行くぞ」
腕をつかんで立たせようとする。
「は? 何すんです」
抗議すると、銀髪チンピラは面倒くさそうに、
「何って、メシだよ、メシ。おまえ一人で出歩くの、許可出てねえんだろ?」
「それはそうですが、ザップさんこそ、出勤直後に休憩とかありえないでしょう!」
「さーて、今日はどこ行くかな。まあいいやバーガー食いに行くぞ! てめえのおごりで!」
「聞いて。あと何で私のおごり確定!?」
「後輩が先輩におごるもんだろ、ほら、行くぞー」
腕をひっぱられ、誘拐されかけたとき、
「カイナ、お疲れ。じゃ、休憩行こっか」
銀髪が吹っ飛ばされ、本棚にぶつかる。
「てめえ! 犬女あ!」
ザップさんを軽やかに蹴り飛ばし、私の手をふわっと取ったのはチェインさん。怒るザップさんを完全に無視し、
「××ストリートの○○カフェの新作、食べたいって言ってたでしょ? 連れて行ってあげるよ」
「え、いいんですか!?」
私も瞬時に切り替わる。
あのクリームでか盛り、チョコソースどばどばのショコラ・ラテが私の手に!?
うんうん! クラウスさんの連れて行って下さる『武装警備員常駐、BGMはピアニストの生演奏、夜景が超きれいなお店』もいいけど、やっぱり庶民のためのカフェ、最高!
「おい!! 横から何しゃしゃり出てんだ、てめえ!」
あ。本棚から戻ったチンピラが、女性に中指立てとる。
「女におごらせようとしてるクズが何言ってんの。行こう、カイナ」
「フリに決まってんだろ! 最終的には俺が払って貸し一つってことにすんだろうが!」
「ものっすごく頭が悪い恩着せがましさなんだけど。死んで。てか死ね!!」
「×すぞ、てめえ!!」
「あ、あの……あの、お二人とも」
ケンカの道具となった私は、二人の間で冷や汗をかく。
「人気者だねえ」
他人の顔で珈琲飲んでるスティーブンさん。
いや絶対に違う、これ。
……あとクラウスさんが、寂しそうに紅茶を飲んでいた。