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【血界戦線】紳士と紅茶を

第1章 出逢い




 トラックから、異界人の業者さんが下りてきて、こっちに来る。
 目に見えない結界をまたいできたから、敵意はないと分かる。
 でもクラウスさんは私を後ろに庇うように、立ちはだかった。
「何だね、君は」
 すると作業服の業者さんは、六本腕の全部にトイレットペーパーを持ち、

『まいどー。今朝、ここの死体を回収したとき、トイレットペーパーを渡し忘れてさー。
 じゃ死体六人分でトイレットペーパー六個ねー』

 律儀だなあ!
 異界人の兄ちゃんはトイレットペーパーを私に放り投げ、とっととトラックに戻っていった。
 てか、何でトイレットペーパーなんだろう。ありがたいけど。

「死体六人分……?」

 業者のトラックが去り、クラウスさんが低い声で言った。

「あ、えーと、それはですね……」

 昨日の再開発工事中に、こんな放送があったことを覚えておいでだろうか。
『なお回収して欲しい遺体がある場合は、明朝八時までに道路から分かる場所に出して下さい~』

 再開発のガレキの下から蘇生したとき、私は発見したのだ。
 元々あったガレキの下に埋まっていた『組織』の連中の遺体を。

 出てきたー。腐る前に見つかって良かったー。
 思ったのはその程度だ。

 だって食事睡眠休憩無しで働かせ、イライラしたら殴って電気棒押し当てて、危険な場所に探索に行くとき自分たちは重武装なのに、私には防弾チョッキ一つ護身棒一つたりとも持たせなかった連中だ。
 その他、ここで言えないような、グロいことエグいこともいーっぱいされた。
 悼む気持ちゼロ、清々(すがすが)しい気分で回収に出せた。

「ミス・シノミヤ。どういうことですか。この教会の方々は全員避難したのでは!?」

 あ。クラウスさんが怖い顔だ。
 まあそうですよね。
 ま、痛メンタルに加え嘘つきの罪状追加なら、今度こそクラウスさんは私を見限って去って行くだろう。

 なので安心して笑顔で言えた。


「いやあ、実は婚約者含め、関係者全員死んでたんですよ。あははははは!」

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