第1章 出逢い
「婚約者殿は、まだいらっしゃらないのですか? 教会の方々からご連絡は?」
もう定番となりつつある質問をされた。
「いやあ、そのお……」
いい加減、嘘をつき続けるのが辛い。
「それに生活のことはどうされているのですか? 食事などは?」
何か生活面談でも受けてる気分になってきたな。
しかも今日は執事さんがいないせいか、ずいっと迫ってくる。
「ま、まあどうにかなっておりまして……」
食事は実は取ってない。というか今まで取らされていなかった。
不死なので、最悪、餓死してもどうにかなるので。
でも不死と言っても生理的欲求までは死んでないので、お腹は空く。
今までは『組織』の人らの目を盗んで、腐った残飯を胃に収めるか、そこらへんに生えてる雑草を食べてた。
それにしたって、バレたときは命令違反ということで、殴られたが。
ドーナツを勧められたとき、泣いてしまった私の気持ちが、少しおわかりいただけただろうか。
あれは数年ぶりに口にした、まともな炭水化物だったのだ。
言葉を濁す私に、クラウスさんは厳しい顔だ。
「ミス・シノミヤ。ここでの生活を維持されるのは、相当な困難を伴うものと予測されます。私はあなたを手助けしたいと真剣に考えています」
いやだから、あなた、どこの福祉課の人ですか!
情け無用、手助け無用と、何度説明すれば引いてくれるんです!
物わかり良さそうに見えて、超ガンコだわ。
てか怖いし。座ってても超でっかくて怖いし。
私は半分、涙目であった。
「もしよろしければ、私が、あなたの婚約者や教会の方々を探す手助けをいたしましょうか?」
「いえ、だからですね。何度も言ってる通り、皆は元気で、そのうちに帰ってきますから――」
「!!」
そのときクラウスさんが立ち上がった。
教会の敷地前にトラックが停まったのだ。