第4章 異変
「クラウスさん。明日もお仕事でしょう!?」
「それがどうかしたのかね?」
「…………」
うん。セッ○スくらいで翌日の仕事に影響が出る感じ、全然しないっすね。
……て、自分で言っちゃった。ついに言っちゃった。
湯気出る! 頭から、湯気出る! 恥ずかしくて死ぬ!
だがクラウスさんは鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌。
「あ、あの……下ろしていただけますか? やっぱ逃げることに――ぐはぁ!」
ただでさえ逃げられない強さだったのに、もっと強く抱きかかえられた。
紳士、どこに行った!! シフト制か! ケダモノと営業交代か!!
もう手加減は止めた、と全力でジタバタするが、下半身がピクリとも動かない。
関節のポイントに上手く力を入れれば、最小限の労力で相手を拘束出来るとは聞くが……!
「わ、私、これからチェインさんと雑草闇鍋パーティーの約束がー!!」
「それは集団食中毒同好会にしかならない、チェインの為にも止めたまえ」
「え!? 私より他の女の心配!? ひどいです。クラウスさん!――ん!」
クラウスさんが立ち止まり、私をちょっと下に下ろし、キスをした。
「今は君しか見えていない」
「…………」
それ以上、何も言えない。というか気づいたらバスルームだ。
さすがにクラウスさんもちょっと緊張気味。もう諦め気味な私に、
「カイナ。もしかして君は本当に嫌なのだろうか? それなら――」
「風呂入ります、風呂っ!!」
逆ギレの勢いで答える以外、何が出来ただろう。
…………
…………。
日本式のバスルームは、相変わらず湯気がすごい。
「あのクラウスさん。よく考えると、別々に入った方が良かったのでは」
「……む」
一理あると思ったのか、ちょっと苦しそうな声がした。
バスルームで甘い雰囲気? そんな展開、期待してはいけない。
今、私たちは距離を取って、湯船につかっている。
身体を洗うときも前回以上に距離を取った。
何でだ。こう、もっとイチャイチャな展開とかあるだろう。
だが私がくっつこうとしたとき、言われた。
『すまない、カイナ。離れていてくれたまえ。君に危険が及ぶ可能性がある』
意訳。襲うかも。
い、嫌なワケでは……決して嫌なわけじゃないんだけど!
まあ『初めて』はさすがに寝室がいいですしね。