第4章 異変
二度寝後、痛む身体を押して家事とか水やりとか、色々やる。
「うむ。この葉っぱの肉付きはまた、なかなか……」
温室の植物の葉を、ブチッとちぎろうとしてハッと我に返る。
いかんいかん。クラウスさんに怒られるとこだった。
首を振って、指示通りの量の水をやる。
「あ。そうだ」
クラウスさんの植物を食べるのがダメなら、自分で育てればいいのでは?
自分のご飯を自分で食べる分には、クラウスさんも文句を言えまい。
そうしよう。後でクラウスさんに頼んでみよう。
そのとき、スマホの着信音が鳴った。
画面を見ると、チェインさんだった。
「はい、チェインさん。どうしました?」
すると、電話の向こうからちょっと棒読みな感じの声が、
『あー、いやこの前泊めてもらったから、そのお礼を言い忘れて』
「え? 気にしないで下さいよ。そんなの」
私の家は、職場の隣という好立地にある。そのためか、たまにライブラのメンバーが泊まりに来ることがある。
チェインさんも先日『飲み過ぎちゃって、家まで行く自信がない』と両手を合わせて頼んできた。
クラウスさんが来てる日だったけど、客室は余ってたのでこっそり泊まってもらった。
……翌朝、顔を洗ってるチェインさんと、クラウスさんが鉢合わせした。
クラウスさんは喜んで三人分の朝食を用意してくれた。
だが上司とその愛人(?)と一緒に、朝ご飯を食べる羽目になったチェインさん。気まずさで砂でも食ってるような顔をしていた。
『でも言いそびれて気になってて……あとカイナ。その、身体、大丈夫?』
「は?」
思わず聞き返すと、ちょっと沈黙があり、
『ええと、ミスター・クラウスが心配してたから』
職場にいるのにまだ引きずってるのか。何か恥ずかしい。
「大丈夫大丈夫、大丈夫とお伝え下さい! もうアザも痛くないし血も止まったし!」
『え……そんな激しいプレイしてんの?』
何の話っすか。しかしチェインさんがこんなことをわざわざ電話してくるということは――。
「クラウスさん、そこにいるんですか? ちょっと代わっていただけます?」
すると少しの沈黙があり、スマホの向こうの声が変わった。
『カイナ……その……』
「チェインさんにアホな電話をさせないで下さいよ。私は大丈夫ですから」
困った大人だなあ。