第4章 異変
私の頭は一瞬にして、パニックの渦中にたたき落とされる。
え? 何、どういうこと!? 使えるのなら、何で昨晩、何もしなかったの!?
『あれ』じゃなかったの!? マジで意味が分からない!
いやそれよりも離れないと。これ、起きたらクラウスさんの方も気まずいって。
だがいくら身じろぎしてもビクともしない。
そういえばこの人、体重130kgオーバーだったっけ。
この全身筋肉がっ!! どうにか起こそうと悪戦苦闘していると、
「う……」
あ。クラウスさんが起きかけてる! もう少しだ!
「クラウスさん! クラウスさん!! 起きて下さい! その、ちょっと……」
「……? カイナ……?」
クラウスさんがやっと薄目を開けた。
でもまだ碧の瞳は不明瞭だ。
「そろそろ起きましょうよ。今日は私が朝ご飯作りますから!」
い、いちおう私も料理は出来ますよ!
……イングリッシュマフィンにジャムとバターと葉っぱを挟んだやつしか出来ないけど。
この前はレタスがなくて、そこらの観葉植物の葉っぱをブチッとちぎって挟んだら、血の涙を流しながら食ってたなあ、クラウスさん。
美味しいのに。
「あと……あの、クラウスさん……」
私の身体に当たってるモノが、勢い衰えずそのままなのが気になる。
「あ、あの……ちょっと、恥ずかしい……です」
まだ覚醒しきらないクラウスさん。
彼がじっと私を見るのに耐えられず、顔を真っ赤にしてうつむき、恥じらいながら言った。
「――っ!?」
次の瞬間、頭を抱き寄せられ、キスをされた。
「……んっ……!?」
キスといっても、いつもしているような、触れるだけの優しいキスとまるで違う。
常の冷静さとほど遠い、勢い任せ。
「……ぁ……!」
指で唇をこじ開けられ、舌を入れられる。
その後はほぼ力でねじ伏せるように、口内を支配される。
「……!……!」
苦しい。顔が動かせない。呼吸が上手く出来ない。舌すらも動かせず。なめ回されてるのか、味見をされているのか、それとも抵抗する力を奪おうとしているのか。
クラウスさんは噛みつかんばかりの勢いで、私の唇に激しいキスをし続けた。
唾液の絡む音。クラウスさんの『牙』が唇に当たる感触。
酸欠寸前の中、このまま舌を噛み切られるんじゃないか。そんな不安すら覚えた。