第4章 異変
ああ、食べた食べたー。
だがアメが終わればムチの時間である。
片付けが終わると、そのまま勉強タイムとなった。
「カイナ。次の問題を」
隣でクラウスさんが、ご自分で編集されたテキスト片手に言う。
「あ、はい」
私はあくびをしながら、テキスト片手のクラウスさんに返事。
当初はエレメンタリー・スクール(小学生)レベルだった私の読み書きも、かなり進んだ。
なので読み書きは一段落させ、今は勉強の範囲を広げている。
もう少し色んなことが出来るようになれば、ライブラの事務作業の簡単な部分くらい手伝わせてもらえるらしい。
「クラウスさん。この式、数字を変えても行き詰まっちゃうんですが」
「ふむ。ここの最適解は――」
「ふむふむ。こうですか?」
「そうだ。正解だ。素晴らしい! カイナ。君は実に理解が早い」
「そ、そうですか? えへへ」
クラウスさんは相変わらず教え方が上手いし、手放しで褒めてくれる。自然と勉強にも熱が入る。
……だが何か違和感。
これはこれで楽しいけど、何か違わない?
つきあってるんですよね、私たち。
顔を上げ、クラウスさんを疑いのまなざしで見る。
「カイナ?」
私の視線に気づき、クラウスさんがテキストから顔を上げる。
少し不思議そうに私を見、
「ああ!」
パッと笑顔になり――顔を近づけ、キスをした。
「うむ」
「うむ」
私たちは謎の頷き合いをし、それぞれの作業に戻る。
……いや、それでいいんだけど!
でも何かこう! 何かこうさあっ!!
自分が何をしてほしいのかもよく分からず、頭をかきむしりたい気分であった。
…………
お勉強が終われば、次は本を読む。
私たちの夜の過ごし方は、以前とあまり、というかほとんど変わりない。
「では次はページの文を交互に読もう。”Hear my voice,――カイナ?」
「…………」
うう。眠い。途中まで頑張ったけど、大あくび。
クラウスさんはフッと笑い本を閉じる。船をこぎ始めている私を両手で抱き上げ、
「そろそろ寝ようか。カイナ。シャワーは?」
「もちろん入りますです」
「一緒に入っても構わないだろうか?」
「あ、はい。どぞ」
瞬間。
寝かけてた自分の頭が『!?』と、一気に覚醒した。