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【血界戦線】紳士と紅茶を

第1章 出逢い



 タクシーが教会前で止まった。
 頭をぶつけそうになりながら下りてきたのは、いい加減見慣れた巨漢の人だった。

「ミス・シノミヤ。お元気そうで何よりです」

 今日は執事さんはいないっぽい。
 タクシーで来るなんて思わなかったから、隠れる時間さえ無かった。

 また来たのか――なんて、思ってはいけないんだろう。
 とはいえ連日だといい加減、対応に困る。

「昨日の傷は、完治されたのですか?」
 クラウスさんは少し不思議そう。
「あははは。ミスタ・アルトシュタインが大げさに包帯巻いて下さっただけですよ。
 こう見えても私もこの街の住人ですから、回復力が早いのです!」
 ドヤ顔で言ってみる。
「そうですか。それは良かった」
 ガーン。軽く流された。

 しかし一対一ということで、威圧感と緊張感が半端なく、ガクブルしてしまう。
 でもクラウスさんが、片手に大きな紙袋を持ってるのが気になる。甘い匂いがするな。ワクワク。
 気分は、おやつを前に尻尾を振りまくる犬である。
 そしてクラウスさんは教会敷地を見て、眉をひそめる。
「また結界が解けておりますな。それに――」
 うん。間近に転がるでっかいガレキ。
「ええ。深夜の再開発工事は勘弁してほしいですよ。誤爆で、うちにガレキを吹っ飛ばした挙げ句、回収もしないとかありえないし」
 それを聞いたクラウスさんはすぐ真剣な表情になり、
「お怪我は? 大事ありませんか!?」
「もちろん何もありません」

 直撃を受け、脳漿と内臓ぶちまけて即死したという話はさすがにしないでおこう……。


 さて。賢明な方はすでにお気づきだろうが、私は『不死』の能力持ちである。


 あ。傷を即治療する『再生者』ではないので、そこらへんの違いにご注意。
 もちろん『血界の眷属(ブラッドブリード)』ではない。
 死んでも生き返る以外は、そこらへんにいる平凡無力な小娘である。

 まあ大して愉快な内容でもないので、そこらへんの事情も後で話しますゆえ。
 

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