第3章 告白(下)
■Sideライブラ
「これは……」
「ホンットに玉砕の可能性が高くなってきたなあ」
K・Kとザップが言う。他のメンバーも声が出ず、あ然としている。
モニターの中で少女は、
『あー、はい。クラウスさん。嬉しいです。すっごく嬉しいです。でもですね、クラウスさんは貴族だから、色々アレがアレでしょ? ほら、クラウスさんもご存じのように私、契約絡みで子供出来ない身体だし、以前のときのアレコレでセルロース分解可能になったから植物は食い物だし、何かこう色々合わないってかクラウスさんはもっとふさわしい相手が――』
あれこれ言葉を連ね、どうにか断ろうとしている。
いや、少女の方もだんだんと混乱してきているようだ。
というか聞き流せないことを、二つほどサラッと言った気もするが。
「あ、やっぱり雑草を消化出来るんだ。一度もお腹を壊さないからおかしいと思った」
チェインが納得したように腕組みしてうなずいてるが、驚く箇所がそこでいいんだろうか。
とりあえず皆の目は、ギルベルトさんに向かう。
彼のスマホは、まだ少女とつながっている。
老執事はモニターを見ながら、柔和な笑みで、どうにか主人のフォローをしようとしていたが。
「カイナさん。坊ちゃまが真摯なお気持ちで話されていることは、この私が保証いたします。
ですので、どうかカイナさんも落ち着いて、ご自分のお気持ちに向き合って――いえそれがお気持ちと言われましても、私は執事ですので、主人たる坊ちゃまに麻酔弾を撃ち込むのはさすがに――ですから、カイナさん。
落ち着いて。ゆっくり深呼吸なさって下さい。
ご安心下さい。坊ちゃまは正気でいらっしゃいます。深呼吸です、深呼吸」
……こちらも苦戦しているようだ。
完全にテンパってるクラウスと、彼以上にテンパり出してる少女。
会話も気持ちも何もかも完璧にかみ合ってない。
茶番だ。ぐだぐだすぎる。失敗だ。
「もう旦那に任せよう。なるようにしかならねえ」
ザップがため息をついた。
「あきらめんじゃねえぞ、旦那。どうしても落ちそうにないときは俺が教えたあのワザを使うんだ――ジャパニーズの女が必ず落ちるっていうアレを!」
彼の手から『失敗』の賭け札が地面に落ち――その下に隠れた『成功』の札が見えた。