第3章 告白(下)
■Sideライブラ
その場にいる全員がモニターをガン見していた。
クラウスは、所作だけは映画俳優のように完璧。
戸惑った顔の少女に語り続けている。
が。
「聞き取りにくっ」
チェインが感想を言った。
その通りだった。
いつものクラウスは、自信に満ち、淀(よど)みのない明朗な話し方をする。
だが今は。初めての研究発表に臨む、上がり症の学生のようにたどたどしい。
「頑張れ、クラッちー!! もう少しよー!! くううっ!!」
「姐さん、ちょっと静かにしてもらえませんかね?」
ハンカチを噛みしめる主婦と、迷惑そうな銀髪のクズ。
だがその後、クラウスは五分ばかり頑張った。
『それで、その、君と交際を、始めたく思うのだが……返事を聞かせてもらえるだろうか……』
言い切った。ついに言い切った!
ついにこの時が来たっ!!
少女はどう答えるのか!!
全員が賭け札を握りしめ、一言も聞き漏らすまいと、スピーカーに集中する。
スティーブンもつい作業を止め、画面に集中した。
そして一分の沈黙の後、声が聞こえた。
『あの、よく聞こえなかったんで、もう一回最初から言ってもらえます?』
あ。これ。一番ダメージでかいやつだ。
■Sideカイナ
「ちょっと、クラウスさん、大丈夫ですか!?」
クラウスさんは、9999hitを食らったような顔をし、胃を押さえてた。ホントに何が起こってるのかよく分からん。
「しっかりして下さい!」
背中をさすり、どうしたもんか、おろおろする。
「そうだ! ギルベルトさんを呼んでくるんで――」
「待って欲しい。カイナ!」
走ろうとすると、パシッと手首をつかまれた。
私を傷つけないやわらかい力。だけど、振りほどけない強さもある。
クラウスさんは顔を上げた。その目には、不屈の魂が宿っている。
「では簡潔に言い直させていただく。
――私と交際をしてほしい!!」
「…………」
私はしばらくクラウスさんの目を見、嘘偽りがないことを確認した。
そして無言でスマホを取り出し、片手で操作。
スマホの発信音が鳴り、すぐ相手が出た。
「あ。ギルベルトさんですか? クラウスさんが錯乱してワケの分からないことを言ってるんです。
救急車を一台、至急手配して下さい」