第3章 告白(下)
■Sideライブラ-Another
「ボスが女に告白する? どこの富豪の娘にだ?」
「パーティーのときずっと抱えてた、あの小さい子だとよ」
「『不死』の能力持ちだそうだ。だが他は普通の良い子だとさ」
「その子、受けると思う?」
「ボスは地位も金も力も頭もある。人格も完璧。断る理由なくない?」
「いやあたしなら無理だな。顔が超怖いし」
「安心なさい。あんたなんか千年経ってもボスは見向きもしないわ」
「で、日時はいつだって?」
「ザップが教えてくれるらしい」
■Sideライブラ
ザップは大得意で講釈を垂れる。
「旦那。タイアンキチジツだ! その日が告白に最適らしい!」
絶対嘘だ。
「クラウス! 奴の講義なんか聞くな! メモを取るなよ!」
スティーブンはクラウスに怒鳴りつける。
が、まっすぐな目が返ってきた。
「スティーブン。六曜はかの国の万事に根付き、冠婚葬祭からギャンブルの日取りにまで影響を及ぼすと聞き及んだことがある。
そう思えば、ザップの話にも一理あると思わないか?」
思わねえよ。
しかしクラウスは焦るあまり、ザップの怪しすぎる話を完全に真に受けていた。
「そうなると次の大安吉日は×日後か。その日に交際を申し込めば」
なぜ何も見ず、異国の吉日がスッと出てくるのか、友の頭脳がちょっと怖い。
とはいえ性急に事を進めるより、一旦冷静になった方がいいことは確かだ。ザップもにんまりし、
「よしっ! 決まりだな。旦那! 全力で応援するぜ!」
「うむ。ありがとう、ザップ」
ようやくクラウスも落ち着き、デスクに戻ってくれた。
そして。
「銀猿。白状なさい。何を企んでるの」
チェインがザップの頭上に現れた。
そしていつものように二人でじゃれ合った後、ザップは白々しく言った。
「何言ってんだ犬女、俺ぁ純粋に旦那の恋を応援してるんだ!」
嘘つけ。さっきはドライに論評してただろう。
チェインも底冷えするような声で、
「あんた、上司のプライベートを賭けの対象にするつもりね?」
ザップは笑っているが、反論しない。
スティーブンは、
「チェイン。賭けになるのか? あの子はあんなにクラウスに懐いてるんだ。断るわけがないだろう?」
すると彼女は少し難しい顔をし、
「さあ、どうでしょうね」
とだけ言った。