第3章 告白(下)
『ご心配なく! 死んでも生き返りますから!』
その一言が、毎回、どれだけ相手の胃に打撃を与えているかも気づかず言い放った。
なので友人の胃を案じ、彼女に多少の説教をしてやった。
だが……やりすぎた。効き過ぎた。
多少どころではなく、かなり堪(こた)えたらしい。
その後一週間ほど、コタツの中に引きこもられた。
しかもその中で、彼女は一つの結論を導いたらしい。
『クラウス・V・ラインヘルツにこれ以上の負担をかけない』
そしてついに別離を言い渡したらしい。
問題は、クラウス側の恋慕の情である。
…………
特に大きな事件も起こらぬまま、午前の時間が過ぎていく。
PCに向かうクラウスは、仕事に集中出来ないようだ。
といっても普段から、プロスフェアーをやる余裕があるほどだから、まだまだ業務に支障はないが。
「はあ……」
ため息が多い。
一分間に何度も何度もスマホをチェックし(恐らくメッセージの返信がなく)ため息。
手紙を書きかけ、途中で手が止まり、ため息。
電話をしかけ、相手が出た瞬間に勢い込んで何か話しかけるが――すぐ切られ、ため息。
……ちょっと、うっとうしい。というか仕事中だ。
そこに空気を読まない馬鹿の声がした。
「往生せいやあ、旦那ぁーっ!!……ぐはっ!!」
オフィスに入るなりクラウスに飛びかかっていったクズは、鉄拳の一発で倒れ込んだ。
「……どうしたぁ、旦那。いつもよりパンチが弱いぜ。反応も0.05秒遅かった」
ザップは敗北した分際で、せせら笑う。
大量の鼻血を出していなければ、多少は男前に見えただろうが……。
だがすぐ周囲をキョロキョロし――いつもソファで寝てるか、クラウスの周囲をウロウロしてる少女がいないと気づく。
「どうした、旦那。あのチビ。また死んで再生中か?」
こいつもこいつで、平気で地雷を踏み抜いてくれる。
ちなみに前回、こいつが唐突にコタツを持って来たのは、師匠の影響でアジア方面に多少の知識があったかららしい。
この功績からザップを『セクハラチンピラ』と毛嫌いしていた少女は、180度態度を変えたとかなんとか……。
まあコタツ代金を相当ぼったくられたそうだが。