第3章 告白(下)
ミカンを食い終わった!
私はミカンの皮を手に乗せ、スッとコタツの外に出す。
沈黙の後、私の手からミカンの皮が取り払われる。
なので私は手を戻し、またコタツの中で丸まった。
「!!」
次の瞬間、私の世界が喪失する。
クラウスさんがコタツを丸ごと、頭上に持ち上げていた!!
白日の下にさらされた、わたくしの王国。
コタツ布団の上には、菓子のクズや空き袋やペットボトルが散乱し、ゴミ王国の様相だった。
ギルベルトさんが無言で、ゴミ袋片手に大きなゴミを片付け出す。すでに背後には最新型クリーナーが待機済みだった。
私は呆然とし、私の王国を奪った赤毛の悪魔を見上げ、一言言った。
「外道」
「一週間ぶりに君の言葉が聞けて何よりだ。カイナ……」
コタツを脇に置きながら、クラウスさんはハーッと肩を落とした。
…………
ライブラの事務所で、クラウスさんはお仕事をされていた。チェインさんとザップさんもいた。
「旦那、子守のバイトを始めたのかよ」
「子守というか……その子、どうしたんですか、ミスター・クラウス?
仕事の邪魔をする子じゃないと思ってたのに」
「いや子守じゃねえか。俺は聞いたことがあるぞ……えーと、ジャパニーズ・オンブオバケ!!」
ザップさんとチェインさんの声が聞こえる。
私はふてくされ、ぶすっとクラウスさんの背中にもたれる。
「邪魔になどなってはいない」
クラウスさんの嬉しそうな声だけが聞こえた。
ちなみにクラウスさんは今、でっかい『はんてん』をお召しになっている。私はその『はんてん』の中にいて、クラウスさんの背中にひっついていた。
「うむ。私がカイナを怒らせてしまったので、罰としてこうしている」
クラウスさんは私に仕事を妨害されている(はず!)なのに、なぜかご機嫌でパソコンに向かっている。鼻歌すら聞こえる!
コタツを強奪された恨みを晴らしたいのに……でも、クラウスさん体温高いなあ。
ぬくぬく。クラウスさんの心音も、ものすごく安心感を与えてくれる。
正直、コタツよりいいかも。
背中にしがみついたまま、うとうと。
皆もいるし、こっちの方がいいなあと思いながら、私はすやすやと眠りについたのであった。