第3章 告白(下)
「え……それだったのか!? あ、なるほど。量販店じゃなくてアジアンマーケットに行けば良かったのか!」
スティーブンさんが合点が行ったという感じに言うけど、聞いちゃいない。
私は走り出していた。
「ありがとうございます、ザップさんーっ!!」
『コタツ』を持って来たザップさんの首に、全力で抱きついたのであった。
…………
…………
かくして、夢にまで見たこたつを手に入れたわたくし。
その課程で色々とシリアスな流れがあった気もするが、そんなこと次の日にはとっとと忘れ、私はコタツライフを楽しんでいた。
…………
…………
眠る眠る。私はコタツの王国の中でくつろぎきっていた。
そして誰かがそーっとコタツの布団をめくる。
冷気が入ってきて私は『ひゃっ!』と震えた。
そしたら外の世界の向こうから、大きな手が伸びてきて、私の頭を撫でようとする。
しかし警戒したわたくしは、スッと手を避け、コタツのさらなる深淵に向かう。
「カイナ……その、新しい家具が快適なようで何よりだが、少し外へ出ないかね?
ライブラの皆も君に会いたがっている。ギルベルトも、君がちゃんと食事と水分を取っているか案じている。
ほら、こっちに……」
大きな手が私の腕をつかみ、ずりずりとコタツの外へ引っ張っていく。
外に出ると、心配そうな顔のクラウスさんがいた。
後ろには、『ザルに山盛りミカン』を持ったギルベルトさんも控えている。
けど私はそっとクラウスさんの手をはがす。
「…………」
すっ、すっ、と、腹ばいのまま無言でコタツの中に戻り、めくれた布団をそっと戻した。
残るは温かい赤外線の光。私はゴロゴロと喉を鳴らし、丸くなった。
「……カイナ」
また布団が少しめくれ、冷気に身体がすくむ。だが今度はデカい手は入ってこない。
「ギルベルトが市場で高級ミカンを購入したそうだ。外に出て、私と食べないか?」
「…………」
外には出ず、無言で片手をコタツの外に出す。
少しの沈黙の後、私の手にそっと、丸っこいものが乗せられる。
私はすっと手をコタツの中に引っ込め、コタツの中でミカンを頬張ったのだった。
ゴロゴロゴロ。