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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)



 まぶしいな、と思う。
 他の人は私が『不死』だから、違う生き物に見えるかもしれない。でも私にはクラウスさんが『人間とは違う生き物』だ。

 いったい、どうすれば恩を返せるのだろう。
 どうすれば、少しでも喜ばせることが出来るのだろう。

 分からない。 
 でも一つ確かなのか。

「あの。これから、なるべく、死なないよう、がんばります」
 
 おずおずと言った。
 私の過去に深く触れた結果、クラウスさんは私の『死』が地雷ワードとなりつつあるらしい。
 少しでもクラウスさんを、私という存在から解放してあげたい。

 それには私が、しっかりするしかないのだ。

「ありがとう、カイナ」

 スティーブンさんもいるのに、軽くハグされてちょっと照れる。
 そのスティーブンさんは、中身が見えない笑顔で、私たちを見て少し笑っていた。

 そして車がやっと止まった。

「やれやれ、やっとついたか。ギルベルトさん、後で熱い珈琲をお願いしますよ」
 助手席で伸びをするスティーブンさん。
「もちろんですとも。おまかせを」
 扉を開け、私たちを下ろしながらギルベルトさんが笑う。

 しかし、『アレ』探しで大変な騒動になったもんだ。
 皆さんに迷惑をかけないよう、今後は自重しないと。

「それでカイナ。探していたものは見つかったのかね?」
 私はクラウスさんに、笑って首を横に振る。
「いいんです。もっと大切なものが見つかりましたから」

 そう言って笑う。

 記憶の中の、あいまいな思い出にはすがらない。
 今の私には大切な人と、大切な今がある。
『アレ』が何なのか分からなかったのは残念だけど、そんなものはもういらない。

 私には、クラウスさんという世界で一番大切な人が、ライブラの尊敬すべき人たちがいるのだ!


「おーい、チビー!」

 そのとき、駐車場に声がした。
 誰かと思ったらザップさんがひょこひょこと歩いてきた。
「おまえの探してるもん、ダチからもらってきたぜ」
 クリーニングは済んでるからなーと言いながらザップさん。
「は?」
 私は呆けた声を出す。

 皆であれだけ探して見つからなかったもの、私自身がついに思い出せなかったものが、そうアッサリ見つかるわけないだろう。けども。

「これだろ? おまえが言ってたの」

 と言って――コタツを出した。
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