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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)


「でも私、脅威になるどころか子供にも勝てないですよ」

「君の力は、この際置いておこう。一番問題だったのは――『感染力の有無が不確定』だったことだ」

 相変わらずの銃声と爆音の中、スティーブンさんは静かに続けた。

「例え君自身に人類への憎悪がなく、戦闘力皆無だったとしても、『感染力』一つで全てが覆(くつがえ)る」

「…………」

「『増殖する不死者』。これが人界にとってどれだけの悪夢か――分かるだろう?」

 銃声と爆音で耳が壊れそうなのに、なぜかシーンとして、音がないように感じた。
 
「でも……でも私の『不死』は神性存在との契約で得たもので、私だけに与えられたものです」

 かすれた声でどうにか言った。

「『組織』があらゆる実験で『不死者』を増やそうと試みても、全て失敗に終わりました!!」

 元教会の地下にいた、タマちゃんを覚えておいでだろうか。
 私の肉体と遺伝子をベースに作られ、私のお肉をエサに世話されてた新種の生物だ。
 あの子の身体のほとんどは『私』で出来ていた。

 けど、それだけ『私』という素材を使っても、なけなしの再生能力がつくのがやっと。
 クラウスさんたちによって、あっさりと倒され、悲しい生を終えた。
 
「『かもしれない』『だと思う』だけで、連中は説得は出来ないんだよ、お嬢さん。
 例え9999の実験で増殖能力が無いとされても、たった1つ方法が見つかれば、それだけで人界が終わるに十分な理由となる。
 クラウスは99.9999%の確率で君の『不死』に増殖能力はないと見ていた。
 だがあと0.0001%――それだけが足りなかった」
 
 スティーブンさんは淡々と語り続ける。

 なのに外は銃声と砲声。目の前には大量のガラス片。
 銃で撃たれたか倒れた洋服ダンスにつぶされたのか、ピクリとも動かない、血まみれの母子の手首。

「クラウスは『残り0.0001%』をつぶすために、君に関する実験記録を子細に調べた。

 ……どうか簡単な作業と思わないでほしい。元々得ていた君の実験記録に加え、あの日地下から押収した全データを解析、保存されていた膨大な映像や動画も一つ一つ確認したんだ。

 例え君自身があいまいにしか覚えていなかったとしても、あいつは君が落ちた生き地獄を――全て見たんだ」

「…………」

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