第3章 告白(下)
「い、いや、そこまで大層な書類を作らなくても、私を見れば『危険じゃない』って分かるでしょ」
というか私って『牙狩り』の人たちに、そこまで警戒されてたの!?
以前にそういう話を、聞いたような聞かなかったような気もするけど……。
でも今まで気軽に死んでたし実験台にもなってたから、『不死』がそこまで警戒されるものだと、思ったことがなかった。
スティーブンさんもうなずく。
「だろうな。以前は『不死者』というだけで、ライブラの中にも君を警戒している連中は多かった。
だがパーティーで君を見て、皆、警戒を解いた。ライブラのリーダーを間近にして、呑気に眠っている。あれは脅威ゼロだってね」
あの赤っ恥パーティーが、思わぬ作用をもたらしてたのか。
「だが、それは君を直接見たからだ。
遠くヨーロッパにいる本部の連中は、わざわざヘルサレムズ・ロットに来る暇も余裕もない」
「…………」
「あれは、君が深い眠りについているときのことだった」
スティーブンさんは遠くを見る。
深い眠りとは?
私は元々、並行世界から召喚され、三流魔導組織『メビウスの輪』の奴隷みたいな存在だった。
でも色々あって私はクラウスさんに助けられ『メビウスの輪』から離脱して、ライブラに正式に入ることとなった。
……そして私は一ヶ月くらい爆睡してたのだ。
多分『メビウスの輪』から抜け出せて安心して。
「クラウスは君をライブラに迎えるにあたり、君という『不死者』の存在を、初めて牙狩り本部に報告した」
私は黙って聞いている。
「最初の報告で、彼はできる限り言葉を連ね、君の能力を最大限に低く見積もった報告書を出した。
『不死』ではあるものの、脅威ではないと」
「はあ」
「僕らも当初――普段の君を見ていたからかな――楽観的に考えていた。
それに『感染実験失敗』のデータも膨大にある。
これなら『要観察』程度で終わるだろうと」
一旦言葉を切る。
「だが本部の反応は違った。連中は君を『人類に敵対心を持つ可能性の高い脅威存在』と見なし、”本部への即時輸送”及び、”完全拘束”が検討され出した」
「え」
敵対心をもっても不思議ではない?
そんな馬鹿な!
い、いやでも今までされてきたことを考えればなあ。
少年漫画だったら、復讐に生きる敵キャラになってるわ、私。