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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)



 私たちは粉々に割れた窓の下に座り込んでいる。
 外からは軍用スーツを着た警察と強盗のバトる音や、ヘリからの機関銃乱射音。どの銃声も、そう遠くない。

「あの、そういうお話はあとでうかがいますので、一箇所に留まるより移動した方が――」

「クラウスにも言われただろ? 僕の指示に従うこと。
 今、君に話したいことがあるんだ。聞いてくれるかい?」

 疑問形を装っているが、声に含まれているのは間違いなく命令。

「は、はい!」
 慌てて正座する。何で。何がスティーブンさんを怒らせたの。クラウスさんが電話をブツ切りしたのも何故?
 怒られるのが苦手な私は、何を説教されるのかとブルブルする。

「外来生物が何で危険か、分かるかい?」
 銃弾の中、スティーブンさんは静かに言う。

「は……はあ」
 唐突だなあと思ったけど、真面目に答えることにした。
「その地域にいた動物を食べてしまうから、ですか?」
「その通り。しかも繁殖で数を増やし、やがて先住生物に取って代わってしまう」

で、その教科書みたいなお話を、警察の超強化機関銃掃射の中、動きもせずしている理由は。

 じれったいな。直接攻撃での殲滅が難しいのなら、私の『不死』の能力で油断させて、とか作戦の立てようがあるのに。
 スティーブンさんって、そういうの、ためらいが無さそうだと思ってたのにな。

「『血界の眷属』が脅威なのは、つまりそういうことだ。
 生身の人間は千年かかっても太刀打ち出来ない、圧倒的な強さ。
 加えて転化により、容易に同族を増やせる『感染力』。これが何よりの脅威だ」

「私も『不死』だけど、あっちは全然レベルが違いますねー」
『血界の眷属』がバリバリのKeterだとするなら、私はSafe中のSafe――。
 ……はっ。私、何か言いましたか!? 失礼いたしました。

「そういうことだ。だが同じ『不死者』でも牙狩りからの君の現在の評価は『ライブラによる監視が適当』」

「マジッすか」
 低評価に少し傷つきながら納得していると。

「そこまで君の脅威判定を下げたのは、クラウス一人の功績だ。
 君が『血界の眷属(ブラッドブリード)』とは根本的に異なるタイプの不死者であると、データを用いてお偉方に証明したんだ。
『人類の脅威にはなりえない』と」

 そのために作成した書類、80000枚。

 …………。

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