第3章 告白(下)
そしてスティーブンさんのスマホに電話がかかる。
こんな状況だと胃うのに、彼は迷わず電話に出た。
「クラウスか。分かってる分かってる。彼女は無事だ。
そう心配するなよ。君とのディナーまでには帰すさ。ああ、彼女と話がしたい?」
スティーブンさんはふつーに、ご自分のスマホを私に渡す。
「君、家にスマホを忘れただろう? 多分、そっちは着信の嵐だと思うよ」
マジか。家にスマホを忘れるとか、なんと言うことを。
内心でショックを受けながらも、通話再開しようとするとスティーブンさんが、
「あ、それとさ。クラウスを刺激するようなことは、絶対に! 言わないでくれよ!」
「大丈夫です。お任せを!」
親指を立てて応えた。
『キャー助けてー』とか『こわーい!』とか『今すぐ来てー!』とか、足手まといキャラみたいなことは言いませんから!
私は意気揚々と電話に出た。
「どうもです。クラウスさん、ご心配――」
『カイナ!! 無事かね! 怪我は!?』
最後まで言うより先にクラウスさんの叫びが聞こえた。
つか声、大きい! 声っ!!
「大丈夫です、大丈夫です。スティーブンさんがついてて下さってますから」
安心させるように言うと、向こうもやや落ち着いたらしい。
『私もすぐに行きたいところだが、あと半時間はどうしても外せない。
いいか。スティーブンの指示に従い、落ち着いて行動したまえ。強盗と相対峙したときは――』
「ご心配なく! 死んでも生き返りますから!」
ブツッと、スマホが切れた。
「あ、あれ?」
電波が悪いのかとスマホを見ると、スティーブンさんがため息をつきながらスマホを取り戻す。
私はきょとんとして、
「そういえばスティーブンさん。軍用ヘリに囲まれて、どう脱出するんですか?
人質交代とかって、やっぱり難しいですかね。私なら生き返るから人質になっても――」
「80000」
「へ?」
唐突に言われ、何の暗号、とスティーブンさんを見る。
「クラウスには絶対に君に言うなって言われてるんだけどね。記憶の片隅にでもいいから、覚えておいて」
「は? 何ですか?」
頭、大丈夫かと上司を見上げる。
「80000ページ。クラウスが君を守るため、牙狩り本部に送りつけた書類の枚数だ」
……えーと。
で?