第3章 告白(下)
そして車は大型家具店の駐車場に入った。
「お嬢さん。ほら、ついたよ、あ、大丈夫かい? 足下に気をつけて。ほら、僕の手につかまって」
いつの間にか外に出ていて、優雅な手つきで私の手を取り、私が車から降りるのをエスコート。
流れるような隙の無い動き。
普段はクラウスさんに隠れ目立たないが、彼は彼で育ちがいいみたいだ。
戦慄に震える私をよそに副官殿は、家具店の各階案内図を見ながら、
「暖房器具は三階だ。じゃ、お嬢さん。すまないが僕の腕につかまっていてくれる?」
「え?」
「振り返ったら同行者がいなかったとか、ここじゃよくあることだからね」
そう言われたら従わざるを得ない。おずおずと腕に手を当てると、
「クラウスじゃなくてごめんよ」
片目をつぶられた。
……何か恥ずかしい。
でもスティーブンさんは少し真面目な顔になる。
「何かあれば僕の指示に従うこと。その時間もないときは身を伏せること。
そして一番大事なことだが――君の『能力』は僕の指示がない限りは決して使うな。いいね?」
「は、はい……」
お、落ち着かねえ。
だけど買いたいものがある。
私はスティーブンさんの腕にしっかりつかまり、家具店に入った。
…………
家具店は人間の客ばかりで、外の世界の店のようにワイワイにぎやかだ。
「うーん……」
私はソファに座り、家具店の分厚いカタログを閉じ、ため息。
「見つからない? カタログにも載ってないなら、どうしようもないかな」
スティーブンさんもさりげにオサレなソファに座り、肩をすくめた。
「人類(ヒューマー)経営家具店は、ここが一番大きいんだけどね。
もう何軒か回れるけど、まだ探してみるかい?」
「いえ。元々思い出せないものですし……もう帰ります」
ありがとうございました、とスティーブンさんに頭を下げる。
「そ? じゃ、帰りにサブウェイでも寄っていこうか」
「はい!」
てか、サブウェイって何だ?と思ってると。
「てめえら! 動くんじゃねえ!」
怒声と銃声がした。あと悲鳴も。
異 界 人 の 強 盗 集 団 が あ ら わ れ た !
……あ、うん。ヘルサレムズ・ロットだなあ。
「お嬢さん。さっき僕が言ったこと、忘れないようにね」
スティーブンさんがゆっくり立ち上がった。