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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)



「えーと、地雷でいいのかなあ。いや対侵入者用対空ミサイル砲の方が確実に……」

 扉脇の防衛パネルを開き、震える手で操作をしようとして。

「寒……! な、何!?」

 冷気を感じて振り向くと――扉の隙間から氷が生えていた!!

 そして、扉の向こうから冷たーい声がする。

『お嬢さん。僕から防犯の心得を教えてあげよう。
 一つ。無防備に扉を開ける奴は長生き出来ない。外に何が待っているか分からないからね。
 二つ。攻撃の意志を固めたら即、行動に移すこと。ためらったら、その瞬間に殺られる。
 三つ。全身の血管という血管に、僕の氷を突き立てられたくなければ、扉を開けなさい。
 ――今すぐに』

 ……最後、防犯関係ないやんけ。

 けど新築のドアを氷づけにされたくなかったので、渋々、ドアのロックを解除し扉を開けた。

「やあ。お嬢さん」

 たった今の脅しなど、存在しなかったかのような笑顔があった。

「……どうも。スターフェイズさん」

 上司のうさんくさい笑顔に、やや引き気味になる。
 この人は苦手である。多分向こうも分かってる。

「ギルベルトさんが急用でね。僕は今日は空いてるから、代理で来たよ」
「いえ、一人で行くって決めましたから。ご丁寧にありがとうございました。では――」
「すまないな。君の意思を尊重したいけど、それで君に何かあったら、僕がクラウスとギルベルトさんに恨まれちゃうからさ。さ、車に乗った乗った」
 即座に遮られた。
 相手は出ていくどころか、私の手首をつかんで外に引っ張っていく。

「誰かー。誘拐されるー」

「君、ミサイルで僕を抹殺しようとしたこと、都合良く忘れてない?」

 私はずりずりと、車の方へ引きずられていった。

 …………

 …………

「おー!! す、すごいすごい! スターフェイズさん、あのデカい建物は何ですか!?」
 車の窓にへばりつき、目をきらきらさせるわたくし。
「パンドラム――超異常犯罪者保護拘束施設だよ」
「スターフェイズさん! 今、ドラゴンっぽいトカゲが道路を走ってました! あれは世界の危機では!?」
「単なる異界運送会社だよ。珍しくもない」
「スターフェイズさん、スターフェイズさんっ!!」
「あー、運転に集中したいから、ちょっと黙ってもらってていいかな?」
 
 ……コホン。舞い上がってました。失礼。

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