第3章 告白(下)
「愚かしいことなど何一つない。君を一人で行かせることが不安なだけだ」
それが馬鹿なことだっつってんでしょうが!
「ともかく! クラウスさんはお仕事をして下さい!!」
力一杯に念を押した。
「ならば私の代理で、ギルベルトを連れていきたまえ」
話し合いの後、クラウスさんはしぶーい顔で仰った。
「うーん……」
ま、ギルベルトさんならいいか。クラウスさん専属執事のお仕事を邪魔するのは申し訳ないけど。
でも目利きの執事がいれば、ぼったくられる心配はない。
彼は私を本物のレディみたいに扱ってくれる。
そのさりげなさがとても心地良いし、時折見せる、お茶目な一面も大好きだ。
「分かりました。ではギルベルトさんに同行をお願いいたします」
私は頭を下げたのであった。
…………
そして翌日。
「遅いなあ……」
私は玄関前で首をかしげていた。
朝早くにクラウスさんをお見送りし、勉強の復習をしたり温室の植物に水やりをしたりし、身支度をととのえればもう出発時間だ。
けど車の音は聞こえてこない。
「どうしたんだろ、ギルベルトさん……」
よそゆきの服を着て、玄関前でうろうろ。
クラウスさんはすでに会談だか会合だかに出かけられたため、スマホは沈黙中。
ギルベルトさんに直接お電話しようかとも思った。
けどこちらに向かってる途中なら、運転中に連絡を入れることになる。
「やっぱり一人で出かけようかなあ」
いいとこのお嬢様じゃあるまいし、執事さんが護衛とか、みっともない。決心はすぐについた。
「よし、出かけよう。ギルベルトさんには後でお詫びのメッセージを入れることにして!」
そうと決まれば善は急げ。
解放感もあって、意気揚々と、私は玄関のドアを開け――。
「やあ」
目の前に笑顔で片手を上げる、スカーフェイスの伊達男がいた。
バタン!
即、扉を閉め、私はハァハァと荒い息をついた。