第3章 告白(下)
うーむ。想いを断ち切ると決意したのに、初っぱなからコレだ。
かといって、いきなり来訪を完全拒否するのは不自然だし、恩知らずすぎる。
てか、クラウスさんの植物があるし。
変な勘違いをしないよう、自分を戒めておかねば。
「……掃除、しとこ」
とぼとぼと我が家に向かう途中、寒風が吹いた。
「う。寒っ!」
思わず震える。
年間通して気候の安定してるヘルサレムズ・ロットだけど、雨だって降るし、こうして寒い日もある。
「そろそろアレを出さなきゃな~」
私はボソッと呟き、さむさむと身体を縮めつつ、家への階段を上がる。
そして止まった。
「……『アレ』って何?」
…………
…………
その夜、クラウスさんが私の家に来た。
「『アレ』かね?」
「そう、アレなんですよ!」
私はクラウスさんの膝の上に座り、力説する。
「『アレ』とは?」
「それが分からないのです。だからずっと『アレ』が何なのか考えてるんです!
おかげで、クラウスさんに関して悩んでいた重大なことが、瞬時にどうでもよくなりまして!」
「い、いや、その、私に関して何か悩んでいたのなら、遠慮無く話してほし……」
「だから、今はどうでもいいんです!」
「そ、そうか……どうでもいい……私のことは、どうでもいいのか……」
何やらしゅーんと落ち込んでるクラウスさんを放置し、私は考える。
けど『アレ』の正体は分からなかった。
…………
「寒いときに連想したものだというのなら、『暖房器具』ではないのかね?
自動温度調整術式で満足がいかないのであれば、手頃なヒーターを探しに行こう」
私を抱っこし、立ち上がるクラウスさん。
「いえ、そうなんですけど、そうではないというか……」
お尻を支えて頂き、クラウスさんの肩によじ登りながら言う。
「何か私の記憶の琴線に触れるものがあるのです。私は、何としても『アレ』を探し出さねばならないのです」
肩に乗ってクラウスさんの頭に身体を預け、腕組みする。
「カイナ。とりあえず倉庫に行ってみよう。何かあるかもしれない」
しっかりと私の足を押さえ、楽しそうにスタスタ歩き出すクラウスさんであった。
私は落ちないよう、頑張ってクラウスさんにしがみついた。