第3章 告白(下)
「マジですよ。こう見えて切り替えの速さには定評がありますから」
「誰の定評だよ……でもま、その顔を見ると嘘じゃなさそうだな。
ホント、女はタフだな。ダメだと分かりゃ、高速で男に見切りつけるしよ」
「そういう言い方しないで下さいよ。尊敬の気持ちは変わらないですからね。
恋愛感情を捨てただけで…………ぐす……」
「おーい、切り替えが早いんじゃなかったのか? ほら、もう泣くなよ、チビ。
おまえは馬鹿でチビで雑草食ってるけど、そういう馬鹿女が好みな男も多いんだぜ?」
「いや慰めてるつもりで、けなすことしかしてないから、あんた!!」
…………
「で、これからどうするんだ?」
ソファでゴロゴロしながら、二人でだべる。
「今までと変わりないけど、クラウスさんのご負担を減らすため、私がもっとしっかりしようと思ってます」
「そっか……頑張れよ。男が欲しいなら、俺のダチでも紹介してやろうか?」
「いや男が欲しいとはカケラも言ってないし、クズの知り合いの時点でクズの予感しかしないし!」
と、じゃれつきながらも、気がつくとザップさんと笑い合っていた。
あとスティーブンさんが視界の端で、ずっと髪をかきむしってた。
気になったけど、お仕事がお忙しいのかと思い、お声かけは避けた。
…………
とはいえ、クラウスさんへのドキドキを断ち切れば断ち切ったで、何か変わるものでもない。
その後、ザップさんが所用で立ち去り、私も本を借りてライブラから戻った。
そして家に入ろうとすると、車の止まる音がした。
「カイナ!」
クラウスさんが小走りに来る。けど最初笑顔だったのが、みるみる曇っていく。
「どうした? 何かあったのかね?」
肩でもつかみそうな勢いだ。
あ、そうだ。今の私は目がちょっと赤い。
昨夜はクラウスさんがいなくって。私はクラウスさんへの想いを断ち切ろうと一晩泣いて頑張ったのであった。
「何か悩み事でも? 何でも言ってくれたまえ!」
親身にされると勘違いしそうになるなあ。でも我慢。
「大丈夫ですよ。ありがとうございます」
でもクラウスさんはやや不満そうで、何度も大丈夫かと念押しをした。でも最後には、
「では、また後で」
「お仕事、頑張って下さい」
笑顔で手を振って見送る。
「また、来る気?」
そりゃ、そうか。