第3章 告白(下)
副官殿の行動に、私は目を丸くする。
「どうしたんすか、スターフェイズさん!」
ザップさんも驚いたようだった。
「い、いや……その、何でもない。少しむせて……」
ギルベルトさんに拭き布をもらい、大急ぎでパソコンを掃除するスティーブンさん。
私たちは呆気にとられ上司を見てたけど、すぐ互いに視線を戻した。ザップさんが、
「旦那への想いを断ち切ったって、まさか……?」
「そういうことです。一晩頑張って、クラウスさんへの恋愛感情を消すことに成功いたしました!」
ドヤ顔!!
そしてごすっと物音。
「……ホント大丈夫っすか、スターフェイズさん」
スティーブンさんが盛大に珈琲をこぼし、ギルベルトさんが雑巾片手に慌てて近づいてく。
「でも恋愛感情ねえ……じゃあ、おまえの方も、やっぱ……」
「ええ。意識したらハッキリ自覚しちゃいました。
でもいいんです。今はそんな感情、無いですから!」
やはりスティーブンさんが、何かうなっているようだった。
…………
「まあ俺も正直、こんだけやらかして未だにヤってないってのは、そういうことだと思ってたけどよ」
しんみりとザップさんが言う。
そういうこと。クラウスさんからの恋愛感情もゼロだったということ。
視界の隅で、スティーブンさんが猛烈に首を横に振ってる気がする。激しいストレッチだなあ。
「元々釣り合わない方だったんですよ。人格的にも地位的にも能力的にも……それこそ雲の上の人って言うか。
私があまりに頼りないから、心配させちゃったんでしょうね。
でもそれを私が勘違いしてご迷惑をおかけするのだけは、絶対イヤですから!」
ちょっと赤くなった目をこする。
想いは断ち切ったものの、一晩泣いて泣いて、泣きまくった。
でも事実は事実だ。
クラウスさんは私に対し、弱き者への慈愛の心しか抱いていないのだろう。
恋愛感情を抱いてると勘違いなど、分不相応。思い上がりもはなはだしい!
「もう大丈夫です! もう忌まわしき感情は完全に捨てました!」
……視界の隅でスティーブンさんが絶望的な顔をされている。
お仕事で何かやらかしたんだろうか。幹部の方は大変だなあ。
「マジでか?」
私の頭をぐりぐりつつきながら、ザップさん。
「マジですよ! こう見えて切り替えの速さには定評がありますから」