第3章 告白(下)
クラウスさんと未だ健全な関係であること。
それをザップさんにからかわれた。
そしてその夜はクラウスさんがお仕事で来れず、一人夜を過ごすことになった。
そのおかげで私は冷静になることが出来た。
…………
「おはようございます~」
翌日、私はライブラの扉を開ける。
先に来ていたスティーブンさんが片手を上げるのが見えた。
いつものデスクにクラウスさんの姿はなく、ちょっと安心する。
と、私の視界を紫のものが遮った。
花束だった。
「何の真似ですか?」
「…………昨日の、アレ……」
ザップさんだ。私から顔をそらし気まずそうに花束差し出してる。
『昨日のアレ』って、あのケンカのこと?
「が、ガキを泣かすのは、趣味じゃねえんだよ。だから……」
セクハラ発言を謝罪したいってことなんだろうか。
じゃあちゃんと謝れや。
ちなみにお花はえーと……これはクラウスさんに教えてもらった花だ。
紫のヒヤシンス。花言葉はまさしく『I am sorry(ごめんなさい)』。
うーむ。チェインさんにヒモ男とは聞いていたけど、なかなかどうして。
またチラッとザップさんを見る。彼はこっちを見下ろしながら、ちょっとそわそわしてる。
はあ。仕方が無いなあ。謝罪は気持ち良く受け入れるのが、大人への近道だ。
なので笑顔で言った。
「ありがとうございます、ザップさん。ちょうどこれ、食べたかったんです!」
「食うんじゃねえっ!! 草食動物か、おまえはっ!!」
え? ダメなの!?
結局ヒヤシンスは、ギルベルトさんによって、きれいに花瓶に生けられたのであった……。
…………
私もいい加減、ライブラのオフィスにちょっと慣れてきた。
ギルベルトさんは各種雑務のお仕事。
スティーブンさんが珈琲を飲みながら、パソコン作業をされてる。
私とザップさんはやることが無い者同士、ソファで雑談となった。
「ま、頑張れよ。旦那は絶対ムッツリだから押し倒せば楽勝だって!」
「馴れ馴れしく肩を叩きながら、とんでもないことを勧めないで下さい」
彼の手をはたき、宣言してやる。
「私、クラウスさんへの想いは完全に断ち切りましたから!」
ブッと誰かが何かを噴き出す音がした。
スティーブンさんが、珈琲をパソコンの画面に盛大に噴き出していた。