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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)



「クラウスさんは聖人君子のごとく高潔な方なんです!! 
 でなかったら……うわああーん!」

 ザップの言動は『女のプライド』に触れてしまったらしい。
 少女は泣きながらザップをボコボコにしていた。
 スティーブンとギルベルトは傍観を決め込んだ。

 ……。

 本当の本当に、何もないのだろうか?

 …………

 その後の定例打ち合わせ時、スティーブンはさりげなくクラウスに聞いてみた。

「君、あの子とまだ清い関係なんだって?」
「……!?」

 案の定クラウスはメモを取ろうとした姿勢のまま、凍りついた。
「僕にだけは話してくれないか? 今ここには二人しかいない」

 決して野次馬根性からの質問ではない……多分。

「スティーブン、どこからその話を!」
「別にいいだろ。彼女は充分君に好意を抱いていると思うけど。まさか君、本当にそういう欲求が無いのかい?」

「いや、それは…………ある」

 沈黙の後ボソッと呟いた。

「彼女で抜いたりしてるわけ?」

 今度はもっと長い沈黙があり――最終的にクラウスは小さくうなずいた。

「呆れたもんだ。それで手を出さないとは本物の聖人君子だよ、君は!
 あ、もしかして家の反応を気にしてるのか?」
 ラインヘルツ家なら、三男が誰とデキようが不干渉だろうに。
 何せこの男が心折れて拳が鈍ろうものなら、本気で人界が滅ぶとまで言われているのだ。

「……カイナを傷つけたくない」

 クラウスは巨体を丸くした。

「彼女は天真爛漫で純真無垢だ。あれだけの過去があってなお、私に明るく笑いかけてくれる。
 私は、あの笑顔にどれだけ助けられたか分からない」

 どうもクラウスには、あの少女が天使か何かに見えているらしい。

「カイナは私が胸の内に何を隠し持っているか知らない。
 私が何もしないと信じてくれている。だからこそ無防備に小さな身体を預け、私の腕の中で安らいでくれる」

 クラウスは両手で顔をおおい、うなだれた。

「もし私の内に眠る獣性に気づいたら、どれほど彼女は私を軽蔑するだろうか!
 カイナを失望させたくない! 私のそばから離れていってほしくないのだ!
 私はどうすればいい、スティーブン!」

「大丈夫だ、自信を持てよ」

 スティーブンは友人を慰めながら決意した。

 ――面白いから放っとこう。

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