第3章 告白(下)
■Sideライブラ
職場において許されざるもの――セクシャル・ハラスメント。
少女は今日もライブラに来た。
まだ緊張しているようで、こちらに軽くおじぎをし、こそこそと本棚に向かう。
クラウスに休養を勧告されているから、特にやることもないはずだが『何か手伝うことはありませんか』と一日一回は顔を出す。
そのクラウスは、今朝も少女の家からの出勤だ。
彼女には休めという割に、ライブラにいることが分かると途端にウキウキしだす。
あまりにも露骨で、見ている方が恥ずかしい。
まあ今は仕事で外出中だが。
少女は書棚から何冊か本を取り出し、ソファで読み出した。
ただどこか上の空というか、落ち込んでいるようにも見える。
本のページは一向にめくられず、ギルベルトの出した紅茶にも手をつけない。
少し気にはなったが、スティーブンは黙って仕事を続けた。
そのうち少女は、うとうとと船をこぎ出した。
ギルベルトが、毛布を取りに行く。
街はいつもの通り騒がしいが、緊急招集が必要になるレベルの物でも無い。
静かな昼下がりだった。
「ちーっす!」
そこにザップが来た。
どかどかとソファに近づき、少女がいることに気づいた。
起きた少女が『げっ!』という顔をして逃げようとしたが、襟首をつかまえられる。
「あ? どうしたんだ、チビ? 元気ねぇな。あー。さてはアレだろ!
旦那にヤラれまくって、足腰立たねぇんだろ!! 分かる分かる!」
ザップは少女の腰のあたりを無遠慮に叩き、凍りつく彼女に、
「いっやあ俺ちゃんも女によくやっちまうんだわ! 絶倫は辛ぇよなあ!!
でもなあ体力続かねえなら、ちゃんと言ってくれていいんだぜ!?
まあ上手くごまかして、濃厚なフェ×ってのも――ぎゃあああっ!!」
人間のクズが。
ザップは少女にマウントを取られ、ボコボコにされている。
当人は親切心で発言したらしいあたり、救いようがない。
少女はザップの襟首をつかみ、ボコりつつ何やら怒鳴り散らしている。
仲裁に行くべきかと、ため息をつきつつ思ったとき、ザップの声が耳に入った。
「え……? 旦那とまだヤってないの? マジで? え? えー……」
マジか。
毛布を持って来たギルベルトまでが、わずかに目を丸くしていた。