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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)


 恥ずかしい。逃げたい。
 
 い、いや、クラウスさんと『そういう関係になる』のが決して嫌なわけじゃない。
 でも何というか心の準備が……。

 ンな内心を知りもせずクラウスさんは、
 
「では、私は温室の様子を見てくる。先にシャワーをあびていてくれたまえ」
「あ、はい! いってらっしゃい!」

 そんなことを言われるものだから、もう顔を真っ赤にして手を振って見送る。
 清潔なバスルームでは、超念入りに身体を洗ったりする。 
 そしてふわっとしたパジャマを着て、リビングでドキドキしながら待っていたり。

 三十分。

 一時間。

 ……クラウスさん、遅い。

 窓から外を見ると温室のライトの下、楽しそう~に作業しているデカい影が見える。
 これはしばらくかかりそうだ。
「……勉強でもしてようかな」
 テーブルにノートを広げ、ペンを取る。
 決して向上心ではなく、褒められたい一心という下心であるが。

「ここに入る単語は……この意味は……」
 一度始めるとそれなりに身が入る。
 電子辞書を引き引き、後でクラウスさんに聞くことをメモする。
「…………眠い」
 ちょっとあくび。
 睡眠障害が治った。
 ……のはいいだけど、今度は午後十時を過ぎると眠くなると言う、お子様体質になってしまった。
 眠い。頭が船をこぐ。
「いや、待て待て。もう少し……もう一問だけ」
 まぶたを、どうにかこじ開け、ペンを取ろう……取ろうと……。

 暗転。

「――はっ!!」
 ガバッと起き上がる。上半身を上げた拍子に、何かが大きな衣類が床に落ちた。
「え? あれ!?」
 拾い上げるとクラウスさんの特大ベストだった。
 私はテーブル横のソファで寝かされていた。

「ああ! せっかくクラウスさんが戻ってたのに!」

 しかもテーブルを見ると、練習問題はしっかり添削済み。
 メモには丁寧な字で、解答が記されている。
 何で気づかなかったんだと、頭を抱えた。
「でもクラウスさん、シャワーあびてるのかな」
 そわそわと落ち着きなく部屋をキョロキョロ。
 わずかに汗の染みこんだ、ベストの匂いを嗅いだりする。
「いや変態かっ!」
 自分で自分にツッコミを入れ、ソファに寝転ぶ。

「あ~もう、緊張して眠れないですよ」

 ベストをギュッと胸に抱きしめ、大きめソファでゴロゴロし。

 ……ほどなく爆睡した。

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