第3章 告白(下)
前回のあらすじ。勝手に家を建てられた。
…………
引っ越し業者の人は忙しそうだった。
「その鉢はそこに置いてくれたまえ。そっちのプランターは日陰に。そのベジトラグは――」
クラウスさんのご自慢の植物が、温室に次々に運び込まれていく。
ちなみにこれ、ライブラのオフィスにあった物の一部他、園芸仲間や植物園に預けていたのもあるらしい。
ライブラのリーダー止めても、造園業で食っていけるんじゃないか、クラウスさん……。
てか、ここ私の家では?
なぜクラウスさんに浸食されているのだろう。
「そちらのソファとチェストは二番客室にお願いいたします」
一方、ギルベルトさんは高級家具の行き先を、業者に指示している。
何で勝手に家具が注文されてるんだろう。量販店の格安家具でいいのに。
しかしクラウスさんは腕組みをしながら、
「やはり調度品が足りないな」
「異界の家具にも良い物はございますが、日常使いとなれば人界の物がよろしいですからな」
「カイナは、どういった家具を希望するのかね。やはり出身地域の物を?」
聞かれたので、恐る恐る言ってみた。
「……テント、欲しいっす。あの日陰あたりに住みたいんで」
日陰には速やかに、大きめプランターが置かれたのであった。
しかし温室や庭園のあちこちに『Inedible(食用に適さず)』『poisonous(有毒)』の札が立っているのは何故だろう……。
その後、私は新しい家について改めてお二人から説明を受けた。
この家、ヘルサレムズ・ロットらしく防衛にも力が入れられている。
ロック何とか社の対武装集団用ブービートラップ、対装甲機動部隊用地雷スイッチ、対空魔術式ミサイル砲……その他あれこれ。
一見、暖かな家屋だが、実態は半ば軍事要塞である。
しかもここらはオフィス街なので、一軒家があると目立ってしまう。そのため『通りからはオフィスビルに見える』という幻術までかけられてるらしい。
「ヘルサレムズ・ロットに女性がお一人で住むのなら、これでもまだ手薄かと」
きっぱりとギルベルトさんは言ったのだった。
いや、以前はテント住まいでしたって。