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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)



 んで数日後。クラウスさんの居住スペースを出て、ライブラの事務所に顔を出した。
 新しい家探しについて、改めて相談するつもりで。

 すると、珍しくクラウスさんもギルベルトさんもいなかった。

 代わりに残っていたスティーブンさんが、
「話が途中になっていたけど、住むところはどうする?
 これからもクラウスの世話になるのかい?」
 すでに察していたらしい。相変わらず頭脳明晰なお方だ。

「まさか。いつまでもクラウスさんにお世話になってるわけに行きません。家探しするつもりです」

 寝てる間はクラウスさんの部屋にいたけど目が覚めてからは、空いてる客室を使わせてもらっていた。

 スティーブンさんは、事務作業をしながら『そう言うと思った』と言う。
「今まで通りでもいいんじゃないか? クラウスも喜ぶ」
「ご冗談」
 未婚の男女が一つ屋根の下に寝起きするというだけで大問題だ。
 ……というのは建前で、クラウスさんからの接触が今まで以上に激しくなっているのだ。

 もちろんクラウスさんと過ごすのは楽しいし、ディナーも絶品。ふかふかのベッドで寝るのは最高だ。

 だがクラウスさんが、私を喜ばそうとあれこれしてくるのが、正直重い。

「クラウスさんも、変な噂が立てばご迷惑でしょう」
「あいつは気にしないと思うけどね。それと、そう考えているなら、もっと早く行動に移すべきだったかな」
「は?」

 スティーブンさんはこちらを身もせず、テラスの方を親指でさす。
 私は『???』という顔で両開きの扉を開け、テラスの方に行った。
 そこからは、私がいたテントを見下ろせるはずだった。

「――んぁっ!?」

 声にならない声が私の口から出る。

 元々、更地にボロいテントしかなかった場所。
 その土地に、そこそこ良さげな新築物件が建っていた。
 狭すぎず広すぎない、暖かな一戸建て。
 ガーデニングに良さそうな庭に温室までついてる。

 ちょうど施工完了らしく、よーく目をこらすと、クラウスさんとギルベルトさんが、業者から説明を受けていた。これから中に入って、最終点検らしい。

 すると、クラウスさんがこちらを見上げ――何と、私の視線に気づいたらしい――手を振っている。
 仕草から察するに『君も来たまえ』と。

 遠くすぎて表情までは分からないが、クラウスさんのドヤ顔は目に浮かんだ。


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