第3章 告白(下)
スティーブンさんが音声レコーダーを堂々とテーブルに置く。
「じゃ、さっそくだけど、君がいた組織について聞きたい。いいかな」
「カイナ。辛ければ無理に話さずとも構わない」
「いえ、大丈夫です。私が知っていることは、何でもお話します」
そして私は、覚えている限りのことを話した。
……といっても、こっちは単なる実験台だから話すことはさして無かったけど。
でも知ってることを出来る限り、どうにか話した。
『不死』を手に入れた経緯とか、組織の幹部のこととか、耳に入った極秘情報とか。
ただ大半が自分が受けた人体実験のことになってしまい、話す側より聞いてる側(というかクラウスさん)が辛そうだった。
クラウスさんも重要事項を書き留めようと、メモとペンをもっていたが、途中で三回ほどペンを下り、ついにメモをあきらめてしまった。
「……以上です。内容に嘘偽りはありません」
「ありがとう」
スティーブンさんは黙ってレコーダーのスイッチを切った。
「辛い話をさせてすまなかった」
「いえ、そんなことは……」
私はギルベルトさんの紅茶を飲んで呼吸を整え、額の汗をぬぐった。
…………
そしてちょっと話題を変え、今後のことを話し合うことになった。
クラウスさんはまっすぐな目で言い切った。
「住居はもちろん問題無いな。これまで通り、私のところに住んでくれればいい」
……いや問題大ありでしょう。
「ご厚意、本当に感謝いたしますが、住む場所は他に探します。あと、もう一ついいですか!?」
何とかクラウスさんを遮り、どうしても言いたかったことを、一つだけ言った。
「カイナ! それは納得がいかない! あれは君が受け取るべき対価だ!」
案の定、クラウスさんは大反対だった。
私が何を言ったか。
一ヶ月前、私たちは、私がいた『組織』が残した大金を見つけた。
私は今まで虐待され、無報酬だった。なのでクラウスさんはその金をそっくりそのまま私に渡すと、『組織』の残党に宣言した。
結果、無一文だった私はいきなり数百万ゼーロの大金を手にすることになった。
私はその金をライブラに全額、譲り渡すと言ったのだ。