第3章 告白(下)
「こここのここのこの度は、このたびは! 誠にご迷惑をっ!!」
ここはライブラの応接間。
私はソファに正座し、手をついて全力で土下座をする。
応接間にはソファが二つ。
手前にはクラウスさんとスティーブンさん。
テーブルを挟み、逆側に私が座っている。
「落ち着きたまえ、カイナ。君が詫びることは何一つない」
「そうだよ、お嬢さん」
私は真っ青だった。
何せ一ヶ月間、ほとんど爆睡してたらしい。
その間ずっとクラウスさんやギルベルトさんに、お世話をされていたそうだ。
「顔を上げてくれたまえ、カイナ。君はもう我々の仲間。当然のことだ」
クラウスさんは笑顔。
……『仲間』。仲間というには、その範疇(はんちゅう)を、逸脱しまくった世話をされた記憶があるんだけど。
しかも人のベッドで寝てるところを、皆さんに普通に見られていたような……いいいいや夢だ夢だ夢!
どうか夢であってくれっ!! 頼むからっ!!
「それとパーティーのときも、ほぼ寝ていてお手間を……」
顔面超真っ赤である。
そう。クラウスさんが散々誘ってきた例のパーティー。
もう終わってますよ?
あれだけ前振りしたんだから、さぞかし浪漫ティックなイベント一つでもあると思ったでしょ?
残念! 寝ていて何も覚えてません!
「君、クラウスの膝に乗せられて、寝ながらゼリーとか食べさせられてたからなあ」
と苦笑するスティーブンさん。
なんでいきなりゼリーが出てくるのかって?
私がほとんど食ってないから、胃腸を心配されての選択だ。
パーティーのごちそうを食べたかった-っ!!
だが、私が顔真っ赤になる理由は、他にもある。決して私のせいではないのだが。
「しかもクラウスの奴、他の奴にあいさつに行くときも、君を小脇に抱えたり、おんぶしたりして連れて――」
「それ以上、言わないで下さいっ!! スティーブンさん!!」
クラウスさんは私を手放さなかった。
そんな珍風景を見せられ、パーティー現場にどんな噂が流れたか。
『あれは昏睡状態でやっと再会した、ボスの生き別れの腹違いの妹らしい』という漫画設定はまだ良い方。
『ボスはリアルドールに目覚めたらしい』と言い出す奴までいて、スティーブンさんたちが誤解を解いて回るのに苦労したとか何とか。
ああ~。