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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)



 眠い。

 寝ても寝ても寝たりない。
 しかし窓からさす光で、そっと目を開ける。

「…………」

 ぬーっと、重い身体を起こした。
 ベッド。大きい。
 寝ぼけた頭で考えたのは、まずそれだった。
 大きなアンティークの時計が、カチコチと時を刻んでいる。
 ベッドの端に点滴の棒が見えた。

「おはようございます、カイナさん」
 ベッドサイドに執事さんが控えていた。
「おは……ようございます、ギルベルトさん」
 視界がふらふらする。頭が回る~。
 でもこの時間になっても起きないのは、だらしがない。
 どうにか起きようとし……くたっとまたベッドに戻る。
「無理に起きようとなさらないで下さい。今、坊ちゃまにご連絡いたしました」
 ンな大げさな。
「私、朝からずっと寝ていたんですか?」
「さようでございます」
 あんだけワンワン泣いて。ギルベルトさんもいたっつうのに。
 思い出すと無茶苦茶恥ずかしい。
 でもよく寝た。ダテに平均睡眠時間一時間ではない。
「じゃ、三時間くらい寝てたんですね……今回は長かったな」
 何か自分の声がかすれてる。
 しかし、よく考えるとなぜ普通の部屋に点滴があるんだろう。
 過酷な生活をしてそうな、クラウスさんがお使いになるんだろうか。

「いえ、三日間、おやすみになっておられました」

 寝起きの紅茶を淹れながら、ギルベルトさんが微笑む。
「へえ、それは確かに熟睡出来……三日?」

 あ。いかん、しゃべったら眠気が……また……。

 広い部屋の外から、誰かがバタバタと早足で近づく音。
 扉がバタンと開いた。

「カイナ! 目が覚めたのか!?」
「カイナさん、紅茶に砂糖はおいくつ――」

 ギルベルトさんの言葉を最後まで聞かず、私はまた眠りについていた。

 …………

 寝る。ずっと寝てる。

 時々、ハンパに覚醒する。
 大きなクマさんに抱きしめられてるときもある。

 時々、目が合う。

 そのときだけ、互いに唇をそっと触れあわせる。


 それで安心して、また寝てしまう。


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