第3章 告白(下)
ほんの一日前まで世界の全てだったのに。
あの教会の地下で、私は毎日、泣き叫び、怯え、跪いて許しを請うてきた。
外に出れば、こんなちっぽけで小さい場所とも気づかずに。
たった今、私の胸にストンと落ちた。
私はもう自由なんだと。
「カイナ」
クラウスさんが私に向き直る。
「君には、これからやりたいことも、行きたい場所もたくさんあるだろう。
だがヘルサレムズ・ロットが君にとって、危険な場所であることには変わりない。
当面は、我がライブラに身を置いてくれないだろうか」
そんなこと改めて聞かれなくても、私の返答は決まっている。
「ライブラという環境も、危険が多いことは否定しない。
だが今までの生活よりは遙かに安全だ。それに何より――」
片膝をつき、まるで姫君に接するように私の手を取った。
「私が、君にそばにいてほしい」
「クラウスさん……」
「どうか我が同志として、ライブラの一員に加わってほしい」
「は、はい……それは、もちろん、ね、願ってもなぐ……」
あれ。舌が上手く回らん。視界もどうも潤む。
「う……」
あと何か、変な音聞こえないか? 嗚咽みたいな……。
あれ?
「――――――――!!」
誰かが泣き出した。子供が泣くみたいに。みっともなく。
無茶苦茶に声を張り上げ、涙を流しまくり、泣いていた。
「大丈夫、大丈夫だ」
泣きじゃくる子供を、誰かが包み込み、抱きしめる。
背中を抱きとめる腕はただ大きくて温かくて。
私はクラウスさんにすがり、泣き続けた。
涙が枯れ果て、疲れて眠りに落ちるまで。