第3章 告白(下)
『し、しかし……そっちの物は、全て我々の……その』
もう何を言ってるのかよく分からない。
「落ち着け、クラウス」
スティーブンさんが割って入る。
「だが、あなた方の意見にも一理ある。よって、彼女やこの土地や実験データに関して、何かしらの権利を主張したいのなら、直接ここに赴かれるといいでしょう」
もうスティーブンさんは笑っていない。
幹部様は、真っ青な顔をさらに青くし、
『そ、それは、その……だから、こちらも、日程や人員の選定が……その……』
さっきと似たようなことを繰り返した。
この人のことを、残虐で強い怖い人だとずっと思っていた。
……でもホントは、私みたいな『抵抗しない無力な女子供相手にしか強気になれない人』だったんだろうか。
チェインさんが、ありったけの嘲りをこめた目で、
「私たちライブラのリーダーの元まで辿り着ければの話よね。
今もこうして赤子のように怯え、ヘルサレムズ・ロットに立ち入る度胸すらないあなた方が」
「私はクラウス・V・ラインヘルツ! 私の前に現れるものなら現れてみるがいい!! 私が貴様らを全力で粉砕するっ!!」
『ラインヘルツ……ライブラ!? えっ!? ま、まさかおまえ……い、いえ、あなた様は――!!』
けれどクラウスさんが拳で、モニターを破壊した。
そして通信機器は永久に沈黙した。
…………
「あの調子だとお嬢さんを『牙狩り』に売り渡すのと引き換えに、どうにか『牙狩り』末端に食い込みたい魂胆だったのかな?
三流組織の再興目的で」
相変わらずスティーブンさんの洞察はすごい。
ん?牙狩り? どこかで聞いたような?
「でもそっちルートで牙狩り本部に行かなくて良かった。本部の連中は、不死の君を、あの小物幹部より、より残酷に、”プロフェッショナルに”扱うだろうからな」
スティーブンさんの言葉に、私は震える。
ぶわっと、クラウスさんの殺気も膨れ上がった。
「スティーブン、ザップ。ここを徹底的に破壊する。完全な更地に戻すのだ」
「はいはい」「あいよー」
と、二人。氷と血の刃、それぞれの得物を生成する。
「チェイン。君はカイナを連れて地上へ」
「了解しました。君、行くよ」
「はい……」
私は呆然としていた。チェインさんに立たされ、二人で来た道を戻っていった。