第3章 告白(下)
クラウスさんの大きな手が私の肩に置かれる。
『何だ、貴様は。おい化け物! おまえ、外部の奴を中に入れたのか!?』
「す、すみません。この人は、その……」
ぶるぶるしながら続けようとすると、クラウスさんが私を手で制した。
「『メビウスの輪』の残党に告ぐ。
貴公らがヘルサレムズ・ロットの拠点に残したデータは全て、我が組織が押収する」
『は……はあ!? 何だ、貴様はいきなり現れて! こ、こちらは魔導組織だぞ!!』
「…………」
『……ひっ! か、勝手な真似をすればどうなるか……!!』
あ、あれ? クラウスさんの視線を受け、幹部様がビクッとした。あれ? 幹部様はもっとスゴい人だと思ってたのに。
「えー。『メビウスの輪』でしたっけえ? 聞いたことないんですけどー。
あ、怖い顔っすねえ。もしかして魔導だの魔術だの出せば、相手がビビって大物扱いしてくれると思ったんでちゅか~?
よりにもよって、このヘルサレムズ・ロットで」
ザップさんが鼻をほじりながら、ニヤニヤと笑っている。
『な……、き、貴様……!』
あれ? 私の前ではいつでも自信満々だったのに。
こんな安い挑発に乗るような人だったっけ?
「ああ、うちの部下が失礼を。ですがお嬢さんを責める前に、今まで一度たりとも様子を見に来なかったご自分の非も顧みるべきでは?」
スティーブンさんの笑みは穏やかだが――目にはこの上無い殺意がこもっていた。
モニター越しだというのに幹部様は『!』と青くなる。
『……ひっ……。い、いや、その……に、日程の調整とか、人員とかですね……』
あ、あれれれ? 何かキョドりだした?
私はワケが分からなくなる。
「金銭類は――到底足りはしないが――これまでの給与と非人道的扱いに対する慰謝料としてカイナ・シノミヤ嬢に全額支払われる」
クラウスさんは静かに続ける。
なめられっぱなしの幹部様は、顔色を真っ赤にし、
『お、おまえら、その化け物にたらしこまれたのか!? なら教えてやるよ!
その化け物はな! 何度殺しても生き返るゾンビのようなおぞましい――』
「彼女は我らライブラの所属下に入るっ!! もはや貴様らの組織には戻らんっ!!」
あまりの怒声に、モニターが揺れるほどだった。幹部はもう、真っ青になって口がきけない様子だった。