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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)


 その画面に人の影が……人が映る。なぜか包帯だらけだけど、見覚えがあった。

 確か幹部構成員のお一人だ。私に残虐な実験をして愉しむ、とても、とても怖い男だった。

「その……どうも……」
 通信がつながったのに私の身体から体温が一気に奪われる。
 何もしていないのに息が上がる。上手く立てない。平衡感覚も狂ってる。でも、やらないと。
『何だ、おまえか、化け物』
「す、すみま、せん……」
『他の研究員は。まあいい。とっとと報告しろ』
 横柄な物言いと冷たい視線に、膝がガクガクする。
 ちゃんと報告しないと。皆、亡くなったって。でも色々無事だって。
 私は……この『組織』の一員なんだから。

 …………

「……報告は以上です。その、皆様をお守り出来ず……」
『この化け物がっ!!』
「!!」
 幹部様に怒鳴りつけられ、ヒッと身体を縮めた。
『何でおまえの”不死”の力を利用して、他の奴らを助けなかったんだ!!』
「申し訳ありません。どうしても、間に合わなくて……」
『おまえは不死なんだから、どうにでもなっただろうが、この役立たずっ!!』
 ヒステリックなまでの罵声。ひたすらに激しい恫喝(どうかつ)。
「申し訳ありません……出来る限りここを守ろうと思ったんですが、ここはヘルサレムズ・ロットで……」
『そんなことが言い訳になるかっ!!』
「すみません、すみません!」
 頭を90度まで下げながら、喉が渇く。冷たい汗が止まらない。

 幹部様は罵倒をするだけして気が済んだらしい。

『まあいい……考えてみればおまえが居れば、『メビウスの輪』再興も夢じゃねえ!
 化け物。全データと金を持って、明日中にヘルサレムズ・ロットを出ろ』

「え……? そんなにすぐに……それに私一人じゃ……」

 明日中なんて、到底無理だ。
『いいからとっとと言われたとおりにしろ!! 痛覚十倍の薬品を神経に直打ちして、生きたまま解剖してやってもいいんだぞっ!!』
 私は歯の根が震えるほど恐怖した。幹部様はと脅しではなく、本気でやる。
 それは今まで充分すぎるほど身に染みている。
「は、はい。申し訳ありません!! い、今すぐ、荷造りを――!!」
 頭を必死に下げ、許しを請う。
 幹部様は残酷な笑みを浮かべ、喜悦に酔っているように見えた。

 けど。

「その命令を拒否する」

 誰かが私の前に立っていた。

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