第3章 告白(下)
皆、ちょっと疲れたような顔でため息をついてた。
「マジ、ぶっ壊れてるよなー」
というザップさんの呟きがボソッと聞こえた。
や、やっぱ自分、ちょっと空気読めてないだろうか。胃が痛い。
「君はもう死なないと、私と約束をしたのではなかったのか?」
クラウスさんが静かに言う。
ンなシーン、いちいち覚えてないっつの。
「死なないのは『努力目標』ですよ。この街で死なないって無理だし。
大丈夫です。私、死んでも生き返るから!」
「カイナ……」
クラウスさんはとても悲しそうに、何かを言おうとした。
「おーい、旦那! もう止めとけよ。行こうぜー!」
ザップさんが立ち上がり、伸びをしてる。
「あ、そうだ。通信機、通信機! タマちゃん死んだから、こっから一番奥の部屋行けますよ! こっちです!」
私はクラウスさんに背を向け、一番奥の緊急時通信室に走って行った。
…………
地下の一番奥。そこには、想定外の事態が起こった時用の、衛星通信装置があった。
……ヘルサレムズ・ロットでは毎日が想定外、ということが『組織』の想定外であったようだが。
「良かったー。これでやっと報告が出来ますよ!」
私は通信機器を起動させ、安堵する。
……けど、すぐ黙り込む。
『本部』にどうしてもつながらないのだ。
五分、十分……。通信装置は『接続中』の表示のままだ。
誰も口をきかず、じりじりと時間が過ぎていく。
「……あのよお、チビ」
「カイナです!」
「カイナ。勝手に盛り上がってるとこ悪いんだけど、いつまで待っても通じないと思うぜ?」
「気安く名前で呼ばないで下さい、馴れ馴れしい!」
「×すぞ、おまえっ!!」
「セクハラよ。銀猿」
割って入るチェインさん。
「いや今ケンカ売ってきたの、このチビだろ! 絶対!!
上手くいかねえからって、イラつきやがって!!」
ザップさんとチェインさんがケンカしてるのを横目に、私は応答を待つ。
「おかしいな……」
だんだんと焦ってくる。
そんな私を、クラウスさんとスティーブンさんが静かに見ていた。
――いったん、通信を切った方がいいのかな。
そう思いかけたとき。
「あ、つながりました!」
『!?』
ザップさんとチェインさんが息を呑むのが聞こえたけど、私は画面を注視して聞いていなかった。