第1章 出逢い
ガタガタ震え、涙目で頼んでみた。
「あんのー、ミスター。逃げるのはあきらめました。
だから慈悲がおありでしたら、私の頭を先に一発撃つとかしてくれません?……いだっ!」
銃ではなく触手の拳で一発殴られただけだった。
口は災いの元。そして浮遊感とともに、私はブンッと生体ブルドーザーのお口の中に放られてしまった。
「心配すんな。一瞬だからよ」
後ろから地上げ屋タコの声がする。
いや、これ! 上手いこと即死しなかったら三分くらいは地獄の苦しみ味わうコースだぞ。
人生の何より長い三分になりそうだなーと目を閉じた。
ああ、間近でドリルが高速回転する音が。
即死しろ即死しろ、即死しろと、目を閉じて祈ったとき。
「ブレングリード流血闘術――」
ん?
「32式!! 電 速 刺 尖 撃 ! !」
獣のような咆吼が轟き、そしてバラバラに砕け散った。
私では無い。巨大生体ブルドーザーがだ。
一番手前のドリルが私の眼球を貫く寸前、ブルドーザーは剣のような何かに串刺しにされ、血しぶきとオイル、神経繊維やネジをまき散らしながら、砕け散った。
その飼い主と共に。
…………
…………
「…………――!」
クラウスさんが何やら術を発動させると、教会(八割方食われた)の敷地全体を、柔らかな金の光が包み、ゆっくりと消えた。
「おおー!」
つい拍手。
クラウスさんは立ち上がり、ネクタイを締め直す。
「元々ここにあった結界を修復、再始動させました」
手をはらってホコリを落としながら、事も無げに言う。
いやサラッと言ってるけど、すっごいことだから!
「あざーっす!」
私は執事さんに包帯を巻かれながら、パチパチ拍手をする。
『専門では無い』と言いつつ、結界術を使うクラウスさんの手際は実にお見事だった。
先ほどの地上げ屋の戦闘といい、やはりただ者では無かったようだ。
「すみません。ミスタ・ラインヘルツ。命を助けていただきまして」
私はペコッと頭を下げ、お礼を言う。
「あ、ミスタ・アルトシュタインも、もう結構ですので」
応急処置を続ける執事さんにもそう言った。
けど包帯執事さんは『ご遠慮なさらず』と柔和な笑みで、迅速に消毒をしていく。
いだだだだだっ!!