第4章 愛のTABOO
1度深く唇を押し付けてから、ゆっくりと顔を離した。
閉じていた目を開けて、彼の顔を視界に捉えると…彼の少し奥二重な瞳は伏せられたままだった。
何故か急に、いけない事をしてしまった自覚が湧いてきて、俺は気を紛らわせる為に窓を少しだけ開けた。
すると、校庭に植えられていた大きな桜の木から、一片の花弁が舞い込んできた。
それを目で辿ると、その花弁は先生の頭の上に降り立った。
「先生は、花も魅了するんでしょうか…」
その光景をみて、心の思うままに呟いた。
たった一片の花弁が地に堕ちることなく、先生の元に舞った。 それはやっぱり…先生が人を魅了する何かを持っているからこそだと、俺は強く感じた。
何故そんなにも、彼を美しいと思ってしまうのかはまだ分からないけれど…。
そんな美しい彼の寝顔を、見つめていると
彼が小さく身じろぎをして、その薄いブラウンの瞳を俺に向けた。
「起きたんですね…よく眠れましたか?」
彼は戸惑った様子で、曖昧に頷くと机の上に置いてあった瓶底メガネを掛けた。
「眼鏡、かけない方が良いのに…」
和「お前には関係ないだろ」
起きて初めて聞いた言葉が、それ。
強気な口調でひと言そう言われた。
…もう少し可愛げがあれば完璧なんだろうけどな。
「今日は部活しないんですか?」
和「それもお前には関係ない…もう、ほっといてくれ」
「残念ながら無理です、俺は貴方から興味がなくなるまでほっとけそうにありませんから」
俺がそう言うと、先生が眉根を寄せて少し考えるような仕草を取った。
彼からどんな言葉が返ってくるのかと待っていると…。
和「興味がなくなれば、もう僕に構う事はなくなるんだな?」
「必然的にそうなりますね」
そう言って俺が微笑むと、先生が俺の立っている方まで歩み寄って、俺の首に両腕を回すと挑戦的な目でこう言った。
和「…だったら僕と契約しよう」