第1章 嫉妬狂乱
「…ねぇ、翔さん」
翔「なに?」
「ここ、どこ…?」
目が覚めた時には、もう既にここにいた。
ふかふかで大きなベッド上に。
俺の額には冷たい冷えピタ。
ベッドの脇のサイドテーブルには、水と薬…
そして、隣には翔さん。
俺、スタジオで気を失って…
翔さんがここに運んでくれたんだよね?
翔「俺ん家だよ、俺料理とか出来ないけど…
傍にはいてあげられるかなって」
「そっか…ありがと」
翔「薬飲んだから、ちょっとは落ち着いたな」
「まさか、飲ませてくれたの? 一体どうやって…」
翔「口移しだよ…嫌だった?」
「…あ、いや、そんな事はないけど…」
翔「そう、ならいいね」
翔さんは微笑みながら俺の頭を撫でると、
どこかへ行ってしまった。
俺は、左手をそっと唇に当てた。
さっきまで翔さんと繋がってた筈の唇。
確かにちょっと湿っぽい。
薬飲ませる時に、水で濡れたのかな…。
俺、どれくらい寝てたんだろう。
翔さん迷惑に思ってないかな。
ちょっとだけ怖いな…。
そう言えば、智もあの時…俺が気を失う前まで
スタジオにいたんだよね。
…智がここにいないって事は、俺はもう完全に見捨てられちゃったのかなあ。
そう考えるだけで、目頭が熱くなって
悲しさで呼吸が重くなる。
「さとし…」
翔「ニノは智くんの事、好き?」
「…!!」
不意に聞こえたその声に、驚いて
思わず布団を頭まで被った。
ゆっくりとこっちに近付いてくる気配がする。
翔「隠れないで? 別に知ってたから、大丈夫だよ」
「…知ってたって?」
こそっと、鼻まで顔を出して翔さんを見る。
翔「なんとなく、ね…ま、そんな事は置いといて
ほら、温かいお茶淹れてきたから飲もう?」
「あ、ありがと…」
俺は曖昧にはぐらかされながら、ベッドから
少しだけ起き上がって、温かいマグカップを手にした。