第4章 愛のTABOO
【 kazunari 】
昨日から僕に、変なちょっかいを掛けてくる問題児のいるクラスの授業を終えて職員室に戻った。
何なんだよ、あの櫻井って奴は…。
僕の反応を面白がって、授業中にあんな事聞いてきやがって。自分がクラスメイトの目の前で、何言ったのか自覚あんのかな。
職員室の自分の席に置いてある、黄色い抱き枕を抱えながら机に突っ伏した。
人が一生懸命、隠してる秘密を簡単に暴いたりしてさ…何が楽しいんだよ。
「はぁ…本当意味わかんない」
『何がです?』
「うわっ! お、大野先生…居たんですか」
隣の席に大野先生が座っていて、完全に自分だけの世界に入っていた僕は気がつかなかった。
この人も、何を考えているのか分からないんだよな…。
智「何か悩み事でも?」
「え、あ…別に」
僕は彼に素っ気なく答えた…けれど、彼の方が僕に近寄って少し不気味な笑顔を見せた。
「な、なんですか…」
智「聞きましたよ、櫻井くんにちょっかいかけられてるって」
「なんでそれを…」
智「僕にはそういう事を教えてくれる可愛い生徒達がいますから」
「そうですか…そう言えばそうでしたね」
彼は僕と違って、ファンが多い。
綺麗な顔と穏やかな雰囲気の彼の元には、生徒達が沢山集まる。
でも、男なんかに囲まれたって何も嬉しくないのに。
智「それで…? 貴方は彼の事どう思ってるんですか?」
「別にどうとも思ってませんよ…鬱陶しいな、くらいにしか」
智「ふぅん…? それじゃあ遠慮しなくて良いですね」
「え…なんの事ですか?」
智「さ、次の授業に行ってきますね」
大野先生は、僕の質問に答えることなくさっさと職員室を出ていってしまった。
…まさか、彼はまた善からぬ事を企んでいるんじゃないのか。